SE7EN~10th Anniversary Tour in Japan~ @ 福岡サンパレス

<はじめに>
SE7ENのファンの方々へ。
SE7ENライブに初参戦したSE7ENファンとは言えないsachigraが書いています。
カチンとくることあったらごめんなさい。


2015年11月2日(月)。
SE7ENのライブに初めて行ってきた。

開演10分前に到着したんだけど、
席が埋まってなくて、ちょっと大丈夫かなぁ~と心配になった。

10周年記念ライブということで、とても気合が入ったセットが組んである。
こんなステージ最近なかなか無いよなぁ、サンパレスに来るのも本当に久しぶりかもしれない。
10年という歴史が物語っていると思うけど、年齢層は幅広い印象。

開演前に、フォロワーさんに教えていただいた
SE7ENライブ参加の心得2か条を胸の中で復唱。

一、バラードで ウットリ聴き入るべし
二、ダンスナンバーで 肉体美を楽しむべし

ライブは、19:00きっかりにスタート!!
待たせないSE7ENさん素敵。

SE7EN~10th Anniversary Tour in Japan~ 2015.11.02 セットリスト


1.CRAZY
2.BETTER TOGETHER
3.DIGITAL BOUNCE
4.I’M GOING CRAZY
5.UNDERSTAND
6.LALALA
7.SOMEBODY ELSE
8.ヨルチョン
9.ANGEL
10.STYLE
11.瞳を閉じて(平井堅カバー)
12.雪の華(中島美嘉カバー)
13.会いたい
14.影は長くなり(ミュージカル エリザベートから)
15.光
16.LOVE AGAIN
17.ワジョ
18.僕が歌えなくても
19.ありがとう


アンコール


20.Entrance
21.スタートライン

最初からすごい演出で、花火?とかバーンッてなって、
寿命が縮まるかと思ったところで、SE7ENさん登場、細い!

最初の3曲くらいはダンスナンバーで、
SE7ENさんすっごい動くから、もう汗だくですよ。

11月9日に誕生日を迎え31歳になるらしいSE7ENさん。
年を取ったから、ダンスがキッツイらしい(笑)
MCとってもウマいです、日本語もウマいです。

SE7ENさんのペンライトは「7」の形。
ツボ押しにも良さそうだなぁ~と思いながら見てたけど、
こちらもライブ中は制御されていて色んな色に変わる。
SE7ENさんも「10年前はなかったよね~」と感慨深げ(笑)

ダンス曲もバラードもミュージカル曲も全力で歌うから、SE7ENさんずーっと汗だく。
ダンスも歌うことも「大好き」というのが伝わってくる。
その力加減は、見ているこちらも心地よく感じる。

途中、SE7ENさんの10年間の軌跡を編集したビデオが流れて、
20代のSE7ENさん、やはり若い(今も十分若いです)。
MCでも「年取ったから~」って散々言ってたけど、たぶん今の自分気に入ってるはず。

早い段階から日本で活動して、10年もの間、韓流ミュージックシーンをトップで走ってきて、
変わらずに、それでも進化し続けるというのは本当に大変だと思う。

長い指、
「が」の発音、
ジャケットの扱い、
ミュージカルもやっちゃうくらいのさすがの歌唱力&表現力、
ツーブロックでオールバックなのにちょっとモフっとした髪型、
オンマへの想い。
パーフェクト。


韓流ミュージックシーンをけん引してきたSE7ENさんの
その並々ならぬ努力が垣間見えて、なんかちょっと好きになったよ!

ダンス曲での肉体美は拝めなかった(T_T)けど、
兵役を終え、30代になって、色々なこと経験して、すごく良い感じに熟成してる感じかなぁ。
生き生きしてる感じ、大人の色気ですよー。

曲は全然知らなかったんだけど、いい声、いい男、むふ。です。
ダンサーさんもみんなカッコいいし、特に女性のダンサーさんが素敵すぎで鼻血出た
少し小さめのハコで「生演奏」だったのも良かった。
確かバンド名は「HEA7EN(ヘブン)」だった。

魅せる、聴かせる、大満足の2時間
今宵はとても楽しませて頂いた!
お礼にTシャツを(ライブに行くと買うことに決めている)ゲット。

ライブは、残り11月6日(金)、11月9日(月)の2回。
11月9日はSE7ENさんのお誕生日らしいから盛り上がりそう。

実はライブに行くまでSE7ENさん…7人組の一人かと思ってたぁ~
行って良かった、SE7ENさんライブ。

結論。
SE7ENは一人で7人分!!

最後に。
ドラマ仕立てのMV「I’M GOING CRAZY」をどうぞ。

にはちが死んだ

2015年7月18日(土)午前8時半、じぃちゃんが死んだ。
病名は「肺炎」。
いわゆる老衰ってやつだ。

91歳。
大往生である。

不死身な気がしていたんだよね。
まさか本当に死ぬとは。

「じぃちゃんが死んだら宴会するわ」
この台詞も、じぃちゃんの不死身感が言わせていた台詞だった。

昨年末から「そろそろ危ない」と言われてて
なんだかんだ寒い日々も蒸し暑い日々も乗り越えた。
家族みんな口々に「じぃちゃん、やりおるな…」と言っていたのだ。

大正、昭和、平成という激動の時代を駆け抜けてきた じぃちゃん。
あの戦争も生き抜いたのだから、生命力は半端なかった。

海兵だったころ、マレーシアから泳いで帰ってきたじぃちゃん。
台湾で休んでいるときにパンツを盗まれた。
それ以来、台湾嫌い。

当時の人としては、背が高くてスラッとしていた。
じぃちゃん曰く「若い頃はブイブイ言わせた」らしい。

競艇が好きで
お洒落が好きで
歌が好きだったじぃちゃん。

場末のスナックに通い
特製肥料で野菜を作り
台湾バナナで怪しい特製元気ジュースを作る。

米寿お祝いの東京旅行。
遠足前日の子供のように緊張して眠れず、
睡眠導入剤+風邪薬のコンボで、違う世界にトリップしてたこともあった。
大好きなLARKの空き箱で東京スカイツリーを作ったのは良かったけど、
出来たものは「東京スカイズリ」だった。

話し出したらキリがないくらいの思い出がある。

病院でもじぃちゃんは人気者だったらしい。
夜中にこっそりウィスキーボンボンを食べ、むせて結局見つかって怒られる。
板チョコを持って行くと、1枚ペロリと平らげる。
カップラーメンも毎日食べていた。

91歳だもの。
好きな物食べて死ねばいいやん。
みんなそう思っていたから止めなかった。
止めた所で聞かないじぃさんだった。

粋で、お洒落で、しゃーしくて、寂しがりで、強がりだったじぃちゃんは、
最期は男らしくひとりで逝ってしまった。
看護師さんがじぃちゃんの手にチョコレートを持たせていたのが泣けた。

次の週に「丑の日」を控えた、7月18日土曜日 3連休初日。
繁忙期に迷惑をかけないよう、タイミングを見計らって逝ったじぃちゃん。
誰もが口々に「空気読んだね、さすが商売人」と言った。
そして、じぃちゃんの骨は91歳と思えないほどしっかり残っていた。

「じぃちゃんが死んだら宴会するわ」

あなたが居なくなってもうすぐ100日です。
そろそろ宴会しましょうか。

トンデモじぃさんだったけど。
私はあなたが大好きでした。
じぃちゃん、人生卒業おめでとう、91年間お疲れさま。

裁き(インド) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「裁き / Court」

★★★★★

邦題 裁き
英題 Court
製作国 インド
製作年 2014年
監督 チャイタニヤ・タームハネー
上映時間 116分

<あらすじ-公式サイトより->

社会の縮図が見え隠れする異色の法廷劇

下水労働者の死体がムンバイのマンホールの中から発見された。ほどなく年老いた民謡歌手が逮捕される。彼の扇動的な歌が、労働者を自殺へと駆り立てたのかもしれないと告発されたのだった。裁判は下級裁判所で展開、そこはムンバイの普通の人々の希望と夢が演じられる舞台でもあった。それらの運命を形作るのは弁護士と検察官そして裁判官。映画は裁判所という主舞台を離れ、彼らの個人的生活を静かに観察していく。

「裁き / Court」

タイトル「裁き」と被告人のおじいさんの画像に騙された!
裁判映画は大抵、弁護士が熱弁をふるって無実の被告人を助ける、法廷での白熱したやり取りが見せ場。
だが、この「裁き」は全く違う。
ボリウッド的な要素も一切ない。

この映画の中で、裁判自体は大きなウェイトを占めていない。
弁護士も検事も裁判官も、条文に従って淡々と役割を果たすだけの冷め切った裁判劇。

ある労働者の死を裁く法廷を中心に、被告人、弁護士、検事、裁判官のプライベートを描き、その中でインドが抱える諸問題、日常を映し出している。
観客はこの4人を通して、人間は見た範囲、知っている範囲だけの姿ではない、自分のフレームやレンズ通りの人間ではないのだと、気づかされる。

ラスト、裁判官の休日は秀逸。
28歳のチャイタニヤ・タームハネー監督、さすが鋭い。


左から、プロデューサー・俳優(弁護士役)のヴィヴェーク・ゴームベールさん、チャイタニヤ・タームハネー監督。
ヴィヴェーク・ゴームベールさん、映画の中では髭を生やし眼鏡をかけて、いかにも弁護士風だったのが、急にラフだから気づかなかった(笑)。

「裁き」のポスターについて興味深い話も聞けた。
ポスターは全部で4種類あり、全部を見せて選んでもらったらしい。

福岡国際映画祭に持ってきたポスターはこれ。
被告人のおじいさんのイラストは無し。

次に、インドで使用されたポスター。
こちらは被告人のおじいさんを全面に出して、法廷劇の映画、もしくは何かの布教?とも見えそうなポスター。
映画の内容からすると、これはちょっと惑わされる。

3つ目は、イラストが目を引くポスター。
土管に被告人、後ろには法廷。
分かりやすいけど、ポップすぎる印象。

最後は、監督とヴィヴェークさんのポーランド人イラストレーターの友達に作ってもらったというポスター。
3人(弁護士、検察、裁判官)の顔のラインが交錯している。
白、黒、赤の3色しか使っておらず、シンプルながらも目を引くデザイン。
お二人はこのポスターが気に入っているとのこと。

個人的には、お二人も気に入っているという最後のポスターが好きだけど、この映画祭の来場者の年齢層を考えるとやはり、分かりやすく、それでいて今どきのデザインである1番目のポスターを福岡国際映画祭が選んだのもうなづける。
このポスターに関して、私見だが、人物をわざとポリゴンスタイルにして、人間の多面的な部分を表現したのでは?と思っている。

それにしても、チャイタニヤ・タームハネー監督もプロデューサー・俳優(弁護士役)のヴィヴェーク・ゴームベールさんも、めっちゃノリが良くてラブリー。
とてもあの映画の中の人たちとは思えないほど(笑)。
インドの人たちやっぱり陽気w

シェリナの大冒険(インドネシア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「シェリナの大冒険 / Sherina’s Adventure」

★★☆☆☆

邦題 シェリナの大冒険
英題 Sherina’s Adventure
製作国 インドネシア
製作年 2000年
監督 リリ・リザ
上映時間 114分

<あらすじ-公式サイトより->

少女の冒険と成長を描くミュージカル映画

シェリナは元気な少女だが、ゆううつである。お父さんが農園を指導しにバンドンへ赴任するので転校することになったのだ。転校早々、いじめっ子サダムたちと喧嘩をしてしまうが、ひょんな事からサダムと二人でハイキングに出る事になり、誘拐される。サダムはどうなるのか、シェリナの大冒険がはじまる。

「シェリナの大冒険 / Sherina’s Adventure」

こちらも福岡国際映画祭ではお馴染みのインドネシアのリリ・リザ監督の初長編。
勝ち気な少女シェリナの冒険と成長を描く児童ミュージカル映画。

ミュージカル映画と知らずに見て、子供たちがいきなり歌いだすからびっくり。
ただ、子供たちの歌と踊りはすごいし、本国では人気者になっただろうなぁと想像できる。
ストーリーも単純で分かりやすく、家族みんなで肩の力を抜いて楽しめる作品になっている。

演出は80年代くらいのドラマのような感じで、1998年製作の「クルドサック」のような男くささとか鋭さがないので、リリ・リザ監督の作品なの?という印象。
それからちょっと長いかな…と感じた。
90分くらいの感じでも良かったかも。

個人的にミュージカル映画苦手なのと、シェリナ役の子の ”どや顔” が苦手だった…
というわけで☆は2つ。

ほかの作品を見ていたときに、この映画に出演していた悪役の女性が隣に座っていた。
15年前の作品と同じく、お綺麗ですらっとしてらした。

コードネームは孫中山(台湾) – 台湾映画祭2015 –

「コードネームは孫中山 / MEETING DR.SUN」

★★★★★

邦題 コードネームは孫中山
原題 MEETING DR.SUN
製作国 台湾
製作年 2014年
監督 イー・ツーイェン
上映時間 94分

<あらすじ>

自称“台北一の貧乏高校生”たちの爆笑コメディ! 

未納の学級費の取り立てが厳しくなり、困っていたアツォ。同じ悩みを抱える三人の同級生たちと共に、山分けし、学級費を払うため、体育館の倉庫で埃をかぶっている孫文の銅像を盗み出そうとする。変装用のお面や運搬用の台車を用意し、準備は万端。だが、偶然にもシァオティエンという学生が、同じ計画を立てていることに気づき……。

「コードネームは孫中山 / MEETING DR.SUN」

ポスターを見た瞬間から「絶対に観に行こう!」と決めていた作品。
ちょっと調べると「第10回大阪アジアン映画祭」でグランプリ&観客賞を受賞していた。

生まれた時から貧乏だった。
親も 爺さんも 婆さんも貧乏だった。

未納の学級費を支払うために倉庫に眠る孫文の銅像を盗んでお金にすることを思いつくアツォたち。
仲間を募り、作戦を練り、練習を重ね・・・
ところが、同じことを考えてる別の学生の存在が表れる。
どちらが先に孫文を盗むことができるのか!

主人公アツォをはじめ、この物語に登場する少年たちは、その境遇を貧乏自慢しちゃうくらい明るい。
さて、もう一人の主人公シァオティエン。
「子供も孫もずっと貧乏」と言われて「そんなのいいはずがない」と言う。
アツォはシァオティエンに力を貸そうと、一緒に盗もう!と持ちかけるのだけど、シァオティエンは一人で孫文を盗み出そうとする。
頑なに心を閉ざし、もがき苦しんでいる姿が痛々しい。

一番安いリボンの大きな女の子のお面をかぶって孫文を盗む計画。
はたして うまくいくのか…。

盗み出すシーンは本当にマヌケで面白くて爆笑なんだけど、最後の方はそうでもなく、ちょっぴり切ない。
「貧乏」は子供にとって選択の余地のない状況だけど、
アツォとシァオティエン、正反対の二人、とても良いコンビになりそうな予感。

そういえば、台湾映画の必須アイテム(?)可愛い女の子は一切登場しない。
男子だけで集まって馬鹿なことをやってるのが一番楽しい年頃。
この少年時代の一瞬の輝きをスクリーンに閉じ込めた青春上質コメディ作品。
とは言っても、格差社会や貧困という社会的な問題を背景に、ただのコメディで終わらせていないところがこの作品の魅力でもあると思う。

男子って!
可愛すぎる、友情ステキすぎる、青春っていいな~!
DVDが出たら買おう。

狼が羊に恋をするとき(台湾) – 台湾映画祭2015 –

「狼が羊に恋をするとき / Red Amnesia」

★★★★★

邦題 狼が羊に恋をするとき
原題 南方小羊牧場
製作国 台湾
製作年 2012年
監督 ホウ・チーラン
上映時間 85分

<あらすじ>

遊びゴコロ満載の映像が新鮮な、台湾発ロマンティック・コメディ。

永遠の愛を誓ったガールフレンドが突然姿を消して意気消沈したタン(クー・チェンドン)は、彼女の姿を追い求めるうち、なぜか予備校が集中したエリアにある学習塾相手のコピーショップで働くことに。試験用紙を延々と印刷する退屈な日々を過ごすうち、あるテスト用紙に必ず羊のイラストが描かれていることに気づく。イラストレーターを目指す塾のスタッフ、小羊(ジエン・マンシュー)が描いていたのだ。勉強に必死な学生たちは、小羊が描く羊に気づきもしなかった。ある日、タンは、その羊の隣に狼のラストを描き加えてコピーする。すると物事は思いもよらない方向へ進み出し……。

「狼が羊に恋をするとき / 南方小羊牧場」

夢や恋に破れた敗者たちが集まる台北の予備校街(南陽街)を舞台にしたポップでキュートなラブコメディ。
台北の雑多な街並みに合わせて、予備校外に集う人々の生活を追い、主人公ふたりの話をシンクロさせていて、うまい。

オーソドックスな青春映画、というわけではないコミカルさが漫画っぽい感じもある。
最後の最後にちょっとした仕掛人がいるのも(笑)。

主人公タンが家を追い出されるところから、
これはタンの夢なんじゃない?という感じすらある。
シュールな現実からの逃避が現実になる、みたいな、
大好きな絵本作家モーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」を思い出した。

主人公ふたりはもちろん、登場人物の誰もかれも個性的だけど、
みんな夢を持ってそれを叶えようとしている人たちばかり。
そんな台北の人たちが巻き起こす最後のシーン。
ほのぼの。

映像に遊び心があって、コマ撮りやアニメーションの使い方も凝っているし、もう可愛らしくてチャーミング。
台湾映画のラブコメって本当に可愛くて嫌味がない。

小さな幸せがいっぱい詰まってて、ホウ・チーラン監督のセンスにすっかり魅了されること間違いなし!
また台湾に行きたくなった~!

赤い季節の忘却(中国) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「赤い季節の忘却 / Red Amnesia」

★★★★★

邦題 赤い季節の忘却
英題 Red Amnesia
製作国 中国
製作年 2014年
監督 ワン・シャオシュアイ
上映時間 105分

<あらすじ-公式サイトより->

置き忘れた記憶が見えない恐怖を生む

北京に住むトンは夫を亡くし、一人で暮らしているが、成人した二人の息子と年老いた母親の世話で日々を過ごしている。それも息子たちにとっては傍迷惑な行為だった。しかし彼女の代わり映えのしない日常は、匿名の無言電話がかかってくるようになり狂いはじめるのだった。見え隠れする怪しい影。彼女の周りでは何かが起こり始めていた。忘れ去った文化大革命の亡霊が長い時を経て、トンを精神的に追い詰めていく…。

「赤い季節の忘却 / Red Amnesia」

一人暮らしの老女への悪質な嫌がらせをめぐる心理スリラーから、次第に明らかになる老女の過去、息詰まる展開、そして衝撃のラストへ。
終始、不穏な空気が漂っていて「ざわざわ」と心が落ち着かない。

現代中国が抱える社会問題と政治に翻弄された人生を生きてきた人たち。
文革の歴史がもたらした人生のゆがみ。

夫を亡くし、構いすぎることによって息子の家族や息子にも疎まれる一人の老女を通して、さまざまな現代社会の問題が当たり前のように描かれる。
共感しつつも、主人公が抱える、忘れようと(忘却)してきた過去の罪が明らかになってからは、もう目が離せない。

文化大革命時代に彼女が犯した罪。
「生きる」とは何か…。

ラスト、忘れようとしてきた過去の罪と向き合い、責任を取ろうと心を決めた老女が坂道を駆けていくシーン。
衝撃の展開。最後まで人生のゆがみに翻弄されてしまう老女。
人生はなんて無慈悲で残酷なんだ…。

歴史は政府だけが作るものでなく、一人一人が作るもの。
人は自分が参加した歴史の責任を取らなければならない。
ワン・シャオシュアイ監督は、そう言ったけれど。
自分の過去と向き合い、認め、責任を取ることは難しい。

独居老人、家族関係、性的マイノリティといった現代社会の問題を当たり前のように描きつつ、急激に発展した中国の歪みに巻き込まれ、望まずして自らも罪を背負ってしまった人の人生を興味深く描いたワン・シャオシュアイ監督。
三線計画で内陸部に築かれた、忘れ去られた工業都市が赤く染まる…。

実際、主人公の老女が過去に住んでいた街の建物が赤っぽくて、風景一つ取っても画力が違うし、主演のリュイ・チョンさんの演技が素晴らしかった。
「赤い季節の忘却」という日本語タイトルも秀逸なのでは。


ワン・シャオシュアイ監督、プロデューサーのリウシュエンさん。
ご夫婦なんだそう、とても素敵な笑顔の落ち着いた印象のお二人!

超人X.(ベトナム) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「超人X. / Super X.」

★★★★★

邦題 超人X
英題 Super X.
製作国 ベトナム
製作年 2015年
監督 グエン・クアン・ズン
上映時間 81分

<あらすじ-公式サイトより->

彼の職業、悪と戦うスーパーヒーロー!?

ごく普通の青年スンは偶然にスーパーパワーを身につけ、正義のヒーロー超人X.として親友のマネジメントのもと働いていた。実のところスンは自分のブティックを開くのが夢で、母親を養うのに十分なだけの金を稼ぎ、好きな男性歌手への思いを育むことができさえすれば、それで良かった。ヒーローは単なる仕事だ。しかし、裕福なわがまま娘キキの出現で、彼の日常生活は混乱をきたすのだった。果たしてスンの未来は…。

「超人X. / Super X.」

ベトナム発のB級(笑)アクション映画。
ゲイでゴキブリ嫌い、欠点もあるニュータイプのスーパーヒーロー!
面白いだろうなぁ~と思ってはいたが、予想以上に面白い出来。

まず、ヒーローがゲイという発想が斬新だし、それがネタで終わらないところ好感度アップ。
「人は誰でも性別や出自に関係なく超人になり社会貢献できる」というメッセージは、
誰でも、いつでも、誰かのために自信を持って行動できると伝えていて、なんだか真面目~。

アメコミへのリスペクト、オマージュを感じる娯楽作品になっていて、アメコミ好きだったら分かるシーン満載だった。
途中の戦闘シーンでは、中華鍋がキャプテンアメリカの盾になったり(笑)。
最後はお約束のやりたい放題、アベンジャーズよろしくだったのも面白かった。

配役が良い作品だったと思うし、エンドロールで流れる制作風景でもすごく楽しそうなのが伝わってきて、それが十分に観客にも伝わる良作。
お母さんは清水ミチコに似ていた…ご本人はベトナムの歌姫なんだそう。

肩の力を抜いて、笑える映画が観られるのも福岡国際映画祭の柔軟なところかな。


笑顔がステキなグエン・クアン・ズン監督。
丁寧にサインを書いてくれた。萌えました。

望郷のうた(トルコ・フランス・ドイツ) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「望郷のうた / Song of My Mother」

★★★★★

邦題 望郷のうた
英題 Song of My Mother
製作国 トルコ・フランス・ドイツ
製作年 2014年
監督 エロル・ミンタシュ
上映時間 103分

<あらすじ-公式サイトより->

居場所を探し、往くべき道を求める

教師のアリは小説家志望。母親とイスタンブールの多くのクルド人が住むエリアに住んでいた。旧市街の高級化に伴い、親子は郊外へと引っ越しを余儀なくされた。隣人たちはトルコ東部の彼らの村へ帰ったと思い込む母親は、毎朝荷物をまとめ、村へ戻るために街中をさまよう。アリはそんな母親を優しくなだめるしかなく、母親が聞きたいという歌手のテープを街中で探すのだが、その歌声はなかなか見つからない…。

「望郷のうた / Song of My Mother」

トルコのクルド人※1の物語。
土地を追われ、今まで住んでいた村も再開発で離れざるを得ないクルドの人たち。
アリの母親はその暮らしに馴染めず、毎日村へ帰ろうとする。

若い世代の人たちは、トルコ人に紛れ、イスタンブールの暮らしにも馴染んでいる。
主人公のアリもそんな中の一人だ。

そんな中、お母さんが聞きたがるクルドの古い歌。
国を持たないクルド人は歌で歴史を伝えるそうだ。
カセットテープを探しに出かけるアリだが、なかなか見つからない。

処理しきれない行き場のない気持ちを、心のなかに埋葬しているようなシーンがたくさんで、観ていて辛いし長い。
ただ、最後は、クルド人の尊厳を持ち続け「見えないところに隠していたもの」を取り出すことが出来た主人公に胸が熱くなる。

※1 クルド人はトルコ、イラン、イラク、シリア、アルメニアの隣接する国境の山岳地帯に分布し生活。今回の映画はトルコのクルド人が主人公。


俳優アジズ・チャプクルトさん。彼もクルド人。
最初のシーンで「カラスの寓話」をする教師役で登場。
このシーンがなければ、最後のシーンが活きてこない。

インビジブル(フィリピン・日本) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「インビジブル / Invisible」

★★★★☆

邦題 インビジブル
英題 Invisible
製作国 フィリピン・日本
製作年 2015年
監督 ローレンス・ファハルド
上映時間 135分

<あらすじ-公式サイトより->

見えないよう、見ないように生きること

日本を舞台にフィリピン人出稼ぎ労働者の苦悩と悲哀を描く。日本人男性と結婚したリンダ、不法滞在労働者のベンジー、ホストのマニュエル、建設作業員のロデルという4人を通して、移民労働や国際化が抱える問題をベースに「生き抜く」という人間の基本的な欲求そのものを静かに熱く表現していく。本映画祭でもおなじみのファハルド監督が福岡市、北海道・旭川市で撮影を敢行。福岡フィルムコミッション支援作品。

「インビジブル / Invisible」

守りたいのは家族

福岡国際映画祭ではお馴染みのローレンス・ファハルド監督の作品。
福岡と旭川を舞台に、90年代末頃の不法滞在フィリピン人たちが息をひそめて生きる姿を淡々と描いている。

守りたいのは家族。
小さなコミュニティの中で、家族のために団結もするし、裏切りもする。

「家族のため」に自分を犠牲にして異国で働く人たちの人生。
フィリピンの人たちは海外からの送金を受け取るのは当たり前で、
海外で働き送金する人たちのことを「ヒーロー」と呼び、良い暮らしをしていると思われているのだそう。

映画の中でも「次は○○○を送ってね」と電話でやり取りをするシーンがある。
でも現実は…大変な思いをしながら家族にお金を送金しているのだ。

日本人男性と結婚し日本で生活するリンダ、
不法滞在労働者のベンジー、
ホストのマヌエル、建設作業員のロデル。

4人の主人公を通して「生きる」ことの意味を
とてもフラットな客観的な視点で、静かに映し出している。

その静けさがクライマックスに近づくにつれ
少しずつ破られていくあたり、やはりファハルド監督。
負の連鎖を描かせたらピカイチだわ…。


「福岡に恋した、いつか福岡で映画を撮りたいと思っていて実現できた」と
言っていたローレンス・ファハルド監督。
日本で、そして福岡で映画を作ってくれてありがとう!


また「ロッキンロール!」って書いてる(笑)
来年、再来年も映画祭で待ってます。

蒼ざめた時刻(タイ) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「蒼ざめた時刻 / The Blue Hour」

★★★★★

邦題 蒼ざめた時刻
英題 The Blue Hour
製作国 タイ
製作年 2015年
監督 アヌチャー・ブンヤワッタナ
上映時間 96分

<あらすじ-公式サイトより->

現実と幻想のはざまで彷徨う魂の行方

ゲイであるタムは孤独だった。学校ではいつもいじめに遭い、家族からも疎んじられ居場所がない。ある日、インターネットで知り合ったファムという謎の少年と朽ち果てた豪邸で会うことになった。二人の関係が親密になるにつれ、タムの心の中の闇が芽吹いてくる…。シャープな映像美で、あいまいな時のはざまを揺れ動く少年の魂を描くホラータッチの青春映画。短編映画で注目されていた監督の長編劇映画第1作である。

「蒼ざめた時刻 / The Blue Hour」

映像と音にビクつく96分。
アート(映像美に圧倒される)であり、ホラー(アジアの嫌~な感じの不気味感)であり…
観終わったあとの不思議な感覚。

夢か現か幻か…観る人によってさまざまな解釈が出来るこの作品。
タイでは、昼でもない、夜でもない、この束の間の短い時間を「ブルーアワー」と言うのだそう。

その束の間の時間(=思春期)は、それまで経験したことのなかった激しい情緒を経験し、本人もそれをうまく理解できずに振り回されてしまう。
身体的な変化にとまどうとか、依存と自立の間で揺れるとか。
タムとお母さんが対峙する場面のお母さんの無表情がもう怖い。
どこまでも深く、複雑なブルー。

プールのカットもごみ収集所のカットも記憶に残っているけど、主人公タムが澄み切った青空の下、塀の上を歩くシーンがきれいで目を見開いてしまった。

アヌチャー・ブンヤワッタナ監督も色を意識して作ったのだそう。
またこの作品が7日間で制作されたということも驚き。
今年の作品でもう一度観たい、と思った作品!!
(スケジュールの都合上、見られなかったので再上映求む…)

アヌチャー・ブンヤワッタナ監督とプロデューサーのドーンサロン・ゴーウィワニチャさん。
男性なのだけど、身のこなしが優美で魅了されてしまったよ!
タイの映画好きだから、もっと上映して欲しい。

Little Big Master(香港) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「Little Big Master」

★★★★★

原題 Little Big Master
英題 Little Big Master
製作国 香港
製作年 2015年
監督 エイドリアン・クワン
上映時間 112分

<あらすじ-公式サイトより->

健気な子どもたちと情熱園長の物語

都会の有名幼稚園の園長だったロイ・ワイホンは、エリート層の英才教育に疲れ、職を辞すことにした。そうすれば、博物館で働く夫と世界中を旅するという夢をかなえることもできる。ある日、閉鎖されそうな村の幼稚園の園長と保育士を兼ねる求人広告が目についた。そこに通う5人の園児たちと出会い、子どもたちの不安定な将来が心配になった彼女は薄給ながらもそこで働くことを決心する。実在の人物を元に描かれた感動作。

「Little Big Master」

アジアフォーカス・福岡国際映画祭2015「福岡観客賞」恭喜~!

みんな誰かの大切な人。

閉園寸前まで追い込まれた村の幼稚園で、貧しい家庭の5人の園児たちを助けようとする園長の実話に基づく感動ストーリー。
園長の想いはまず夫へ、そして園児から園児の保護者、村人、最後には香港中へ伝染していく。

貧しくても一生懸命生きる人たちのピュアな気持ち、熱い思い、失わない人間らしさ。
そして夢を見ることの素晴らしさを教えてくれる映画になっている。

肩の力を抜いて素直に観られるし、
これでもかってくらい泣かせられたけど、最後には温かい気持ちになった。
人生のどこかで、自分の生き方を変えられるような出会い、素敵だね。

5人の園児たちの可愛いらしさと言ったら!
それだけでも観る価値アリ(笑)。


エイドリアン・クワン監督、脚本のハンナ・チャンさん。

ちょっとコワモテかと思いきや、自分の映画を観て泣いちゃう、挨拶やQAでも思い出して泣いちゃう、本国では「泣き虫監督」なんて言われているらしいエイドリアン・クワン監督(笑)。

情熱的に「映画を通して世界を変えていきたい、きっと変えることが出来る。夢は必ず叶う。」と力強く語っていたエイドリアン・クワン監督とハンナ・チャンさん。
とても素敵でした。
納得の観客賞受賞作!!

最近の香港映画、とてもいいね!
2013年の観客賞受賞の「狂舞派」も香港映画だったし。
分かりやすいっていうのも良いのかも。

人生生放送!好きなことを好きな時に書いてます。