目撃者(中国) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2013 –

目撃者(中国) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2013 –

アジアフォーカス福岡国際映画祭2013、6本目は

中国青海青年映画祭受賞作品 FIRST「目撃者」

★★★☆☆

基本データ:
監督 / Zehao Gao (高 則豪)
キャスト / ジャック・カオ 他
あらすじ
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主人公の宋(ソン)は妻と二人で小さな飲食店を切り盛りしていたが、レストランのオーナー平(ピン)への借金返済に苦しんでいた。ある晩、友人と行きつけの店で飲んでいた宋は、ひき逃げの現場に遭遇し、事故の“目撃者”になる。ある偶然からひき逃げ犯人の正体を知った宋は、思いがけない行動にでる・・・

中国青海青年映画祭受賞作品 FIRST「目撃者」

>>> 以下、ネタバレあり <<<

見て見ぬふりは我が身を助けるのか。
すべては「幸せのため」と言い切れるのか。
中国が発展を続ける中での下流社会の人達の生活を描いた作品。

主人公の宋(ソン)は、ひき逃げ事故の「目撃者」となる。
宋(ソン)は、被害者を助けようとするが、その甲斐なく被害者は死んでしまう。

自分が疑われるからと被害者を病院の前に捨て、「見て見ぬふり」をし、いつもの生活をようと決めた宋(ソン)。しかし、被害者は行きつけの店の女性店員の彼氏だったことを知る。
しかも彼女は妊娠していた。

複雑な思いを抱えながらも、日々の生活で精いっぱいの宋(ソン)。
店はオーナー平(ピン)への借金返済で火の車。手下にいじめらえる毎日。
そんなとき、宋(ソン)はひき逃げの犯人が、平(ピン)だと知ってしまう。

宋(ソン)は平(ピン)へ仕返しをすることを決め、徐々に平(ピン)を追い詰めていくが、結局は平(ピン)にばれてしまい、行きつけの店の女性店員を人質にされてしまう。
海辺に呼び出された宋(ソン)は、平(ピン)と最後の対決をする。

だれもが「自分の幸せのため」に生きている。
善と悪は表裏一体。

現在の中国の社会問題(例えば、交通事故の現場を見ても自分が疑われるという理由で助けないなどの悲しい状況)を提起し、下流社会の人が虐げられている現実を真正面から見つめた良い作品。
劇中の音楽も秀逸だったし、機会があればぜひ見てほしい映画だ。

最初は「普通の人」だった主人公が徐々に暴力的になっていく様子は、イラン映画「パルウィズ」でも描写されているが、「目撃者」では最後に少し希望が見える。この部分は監督の「願い」「信じたい気持ち」が込められているように感じた。

また、個人のアイデンティティはともかく、守るべき対象(宋の場合は「家族」)があるか無いかで、暴力の質が違ってくるようにも感じた。

インタビューから、高 則豪監督の真面目な人柄を垣間見ることができ、映画作りへの真摯な姿勢が素晴らしいと感じた。
中国青海青年映画祭 FIRSTは、若手映画監督の作品が出品される映画祭とのことで、毎年7月に開催されているそう。

サインをする高 則豪監督(右)と中国 西寧FIRST青年映画祭プロデューサーの李 子為さん(左)。

福岡に来てくれてありがとう!

字幕協力は、福岡大学人文学部東アジア地域言語学科。
福岡の若者を起用したところも、この映画祭ならでは!