果てしなき鎖(フィリピン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2013 –
- 2013.09.21
- Last Update: 2015.09.15
- Movie 福岡国際映画祭2013
- アジア映画
アジアフォーカス福岡国際映画祭2013、7本目は
「果てしなき鎖」
基本データ:
監督 / ローレンス・ファハルド (Lawrence Fajardo)
キャスト / ニコ・アントニオ(Nico Antonio)、アート・アクーニャ(Art Acuna)、バングス・ガルシア(Bang Garcia)、ノル・ドミンゴ(Nor Domingo)
あらすじ
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マニラでのある一日の物語。
貧民街に育ち、盗みで母親と弟の二人の家族を養うジェス。若い女性グレイスのiPhoneを盗み、売りさばいたまでは良かったが、警察に捕まってしまう。そして、釈放の代償として求められたのは・・・。
「果てしなき鎖(Posas)」
>>> 以下、ネタバレあり <<<
これは出口が見当たらないメビウスの輪なのか。
人間社会の不条理は連鎖し続ける・・・
「アモク」で衝撃を与えたローレンス・ファハルド監督の最新作。
盗みで家族を養うジェス。
今日もいつも通り、グレイスのiPhoneを盗むと、すぐに売りさばき意気揚々と闊歩する。
しかし、彼女のiPhoneには秘密の動画が保存してあり、死んでもそれを他人に見せるわけにはいかないグレイスは、警察に助けを求める。彼女に顔を見られていたジェスは、狙った獲物は逃がさないと言わんばかりの警察官についに捕まってしまう。無罪を主張するジェスだったが、iPhoneを売りさばいたお金が出てきて、言い逃れできない状況に・・・。
一方、どうしてもiPhoneを取り戻したいグレイスは、法にのっとり手続きをするが、にっちもさっちもいかない。
「起訴したら時間もかかる。3回の調停に一度でも休めば不起訴になる。今、不起訴にしたほうがいいかもしれない。iPhoneは見つけたら必ず連絡します。」というドミンゴ警部の言葉にグレイスも頷く。
ジェスを不起訴にしたドミンゴ警部は、彼を連れてiPhoneを取り戻させ、さらには逃げられないように「いつものやり方」でジェスを利用するのだった。
「犯罪者もいれば 法を施行する側もいる 放免される日 彼は自由を失う」
フィリピン警察組織の腐敗ぶりを描いた作品。
ドミンゴ警部の澄んだ瞳は、被害者からは信頼を得そうであり、だからこそ、この腐敗ぶりが怖すぎる。
朝は「盗みをやめて堅気になったら」と言っていた母親が、ジェスが捕まって多額の保釈金が必要と言われたとき「この先どうやって暮らしていけばいいの?」となじる場面は、フィリピンの貧困(貧富の差)の問題の根深さを表わしていて、とにかくどこまでいっても救いがない、目をそむけたくなる現実を突きつけられた。
ジェスとドミンゴ警部の「目」。
それがすべてを物語っているように感じた。
グレイスのように富裕層もいれば、ジェスのような貧困層もいる。
生まれながら背負ってきた運命が「いつか変わる」と信じることが出来れば良いが、負の連鎖は容易く断ち切れないだろうと、諦めにも似た気持ちが湧き上がってくる。
「負」のメビウスの輪は裏も表も繋がっている、まるで出口が見当たらない。
常識が常識ではいそんなフィリピンの悲しい現実、そして日常。
(ちなみに腐敗認識指数、フィリピンは129位とかなり腐敗している模様)
ローレンス・ファハルド監督によると、なんと牢獄や警察署などはすべて実在の建物で撮影したそう。
カメラワークも秀逸で、特にドミンゴ警部役のアート・アクーニャ氏の名演技にやられること間違いなし。
サスペンス的な部分ばかりではなく、ちょっと笑えるシーンもあり。
札束詐欺に合う男性が、ロッキーホラーショーの古田新太に見えたのは私だけ?
92分という短さでこの濃さ。
機会があればぜひ見ていただきたい映画です。
ローレンス・ファハルド監督のQ&Aはコチラ!
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