ひとり(カザフスタン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

ひとり(カザフスタン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ひとり / Little Brother」

★★★★★

邦題 ひとり
英題 Little Brother
製作国 カザフスタン
製作年 2013年
監督 セリック・アプリモフ
上映時間 94分

<あらすじ>

ひとり佇む少年の孤独と愁いが胸に迫る

母親に死なれて以来、イエルケンは小さな村でひとりでたくましく暮らしている。子供だと思ってナメてかかる大人たちと闘いながら。そんなある日、実の兄が突然帰ってきた。喜びと幸せ。これで、ナメられないですむ。イエルケンはその兄を頼りにしようとするが…。必死に生きようとする少年の心根をわかってくれる大人はいない。ひとりぼっちの彼の矜持と孤立が切なく、健気だ。

「ひとり / Little Brother」

小学生のイエルケンは、なんと山の村で一人暮らしをしている小学生。
母親が亡くなったあと、父親は再婚し家を出て行ってしまった。
その父親は、1カ月に1回、食料などを持ってくる。
ご飯はその材料で隣の人が作ってくれる。

イエルケンはいつも一人で生活していて、日干し煉瓦を作ったりしている。
そんな彼に、周りの大人や学校の先生でさえも親切にはしてくれない。

健気に泣かずに頑張っているイエルケン。
そんなある日、都会の学校に行っているお兄ちゃんが里帰りすることに。
「これで皆を見返すことができる!」と嬉しくてたまらない。
お兄ちゃんに、相手を負かす寝技なんかを教えてもらったりする。

イエルケンはお兄ちゃんが喜んでくれるようなことを次から次にする。
お母さんの墓参りに行ったり、映画を観に行ったりもする。
映画は6人以上じゃないと上映しないと言われて、6人分の入場料を払ったり。

ところがこの兄ちゃん、里帰りの目的は「恋人」と「金」だった。
イエルケンに知り合いを回らせてお金を借りて来させる兄。
だけど、イエルケンは嫌な顔をしない。

山羊を盗まれたり、作った煉瓦のお金を払ってくれなかったり、金貸しの借金を背負わされたり、子供だからと言ってイエルケンを利用して騙したりするのだから、ホントとんでもない境遇だ。
兄でさえもイエルケンを利用して・・・。

結局、兄は弟から巻き上げた金を使い果たし、街へ戻って行ってしまう。
「バスの見送りがないと親戚がいない人のように思われる」と言うイエルケンは、兄の見送りに行く。

帰り道、お祭り帰りのピエロと出会うシーン。
馬鹿にされながら観客を笑わせているピエロ。
ピエロの顔を見損なったのだけど、悲しみを持つという意味を表現した「涙のマーク」があったのだとしたら、それはイエルケン自身だったのかもしれない。

ピエロにもらったハーモニカを少し吹いて佇むイエルケン。
最後には、イエルケンはまた「ひとり」になる。

初めて観たカザフスタン映画。
なんとエンドロールで「弟に捧げる」と書いてあった。
兄は監督だったのか!!!

イエルケンの暮らしが特に貧しいような描き方はされていないので、すごく悲しい気分になったりはしなかった。
とても健気でたくましいイエルケンが成長して、兄と一緒にお酒を飲み交わしていたらいいなぁと思った。
監督が来福していたら、質問攻めにあっただろうなぁ・・・。

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アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014、これで観た映画のレビュー全て書き終わりました。
(「sala(禁忌)」は日本公開になったらレビューする予定)
今年の鑑賞本数は15本。「予兆の森で」は二回観たから16本。

5点満点
予兆の森で」「シッダルタ」「ひとり」「絵の中の池

4点
ジャングル・スクール」「慶州」「タイムライン」「山猪温泉
ロマンス狂想曲」「私は彼ではない」「ブラインド・マッサージ

3点
神の眼の下に」「兄弟」「サピ」「sala(禁忌)」。

今年の作品は全体的に、自分のアイデンティティーとか、存在する意味を問うような内容が多かったという印象です。そして、ループするような感じ。
そしてやっぱりゲスト登壇があると、より映画の内容が分かって面白いです。

さて、アジアフォーカス・福岡国際映画祭。
来年は25周年ということで、さらに期待大です!