赤い季節の忘却(中国) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –
- 2015.10.14
- Movie 福岡国際映画祭2015
- アジア映画
「赤い季節の忘却 / Red Amnesia」
邦題 | 赤い季節の忘却 |
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英題 | Red Amnesia |
製作国 | 中国 |
製作年 | 2014年 |
監督 | ワン・シャオシュアイ |
上映時間 | 105分 |
置き忘れた記憶が見えない恐怖を生む
北京に住むトンは夫を亡くし、一人で暮らしているが、成人した二人の息子と年老いた母親の世話で日々を過ごしている。それも息子たちにとっては傍迷惑な行為だった。しかし彼女の代わり映えのしない日常は、匿名の無言電話がかかってくるようになり狂いはじめるのだった。見え隠れする怪しい影。彼女の周りでは何かが起こり始めていた。忘れ去った文化大革命の亡霊が長い時を経て、トンを精神的に追い詰めていく…。
「赤い季節の忘却 / Red Amnesia」
終始、不穏な空気が漂っていて「ざわざわ」と心が落ち着かない。
現代中国が抱える社会問題と政治に翻弄された人生を生きてきた人たち。
文革の歴史がもたらした人生のゆがみ。
夫を亡くし、構いすぎることによって息子の家族や息子にも疎まれる一人の老女を通して、さまざまな現代社会の問題が当たり前のように描かれる。
共感しつつも、主人公が抱える、忘れようと(忘却)してきた過去の罪が明らかになってからは、もう目が離せない。
文化大革命時代に彼女が犯した罪。
「生きる」とは何か…。
ラスト、忘れようとしてきた過去の罪と向き合い、責任を取ろうと心を決めた老女が坂道を駆けていくシーン。
衝撃の展開。最後まで人生のゆがみに翻弄されてしまう老女。
人生はなんて無慈悲で残酷なんだ…。
歴史は政府だけが作るものでなく、一人一人が作るもの。
人は自分が参加した歴史の責任を取らなければならない。
ワン・シャオシュアイ監督は、そう言ったけれど。
自分の過去と向き合い、認め、責任を取ることは難しい。
独居老人、家族関係、性的マイノリティといった現代社会の問題を当たり前のように描きつつ、急激に発展した中国の歪みに巻き込まれ、望まずして自らも罪を背負ってしまった人の人生を興味深く描いたワン・シャオシュアイ監督。
三線計画で内陸部に築かれた、忘れ去られた工業都市が赤く染まる…。
実際、主人公の老女が過去に住んでいた街の建物が赤っぽくて、風景一つ取っても画力が違うし、主演のリュイ・チョンさんの演技が素晴らしかった。
「赤い季節の忘却」という日本語タイトルも秀逸なのでは。
ワン・シャオシュアイ監督、プロデューサーのリウシュエンさん。
ご夫婦なんだそう、とても素敵な笑顔の落ち着いた印象のお二人!
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