風は記憶(トルコ・仏・独・ジョージア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

風は記憶(トルコ・仏・独・ジョージア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「風は記憶 / Memories of the Wind」

★★★★☆

邦題 風は記憶
英題 Memories of the Wind
製作国 トルコ・仏・独・ジョージア
製作年 2015年
監督 オズジャン・アルペル
上映時間 126分

<あらすじ-公式サイトより->

それぞれの心に閉ざされた記憶

第二次大戦中のトルコ。共産主義者の主人公は、反抗分子として政府から追われていた。危険なイスタンブールから脱出しソビエトへ亡命するため、国境近くの山小屋に潜伏。そこには初老の男性と若い女性というワケありげなふたりがいた…。抑圧された人々の秘めた想いを詩情あふれる映像美で描く。

舞台は第二次大戦下のトルコ

記者(翻訳家?)で画家の主人公アラムは、共産主義者であることから政府から終われ、ソビエトとの国境近くの村に潜伏した。
匿ってくれる初老の男と若い女、緊張感のある空間。
潜伏先の村でも、政府によって潜伏者が次々と捕らえられ、アラムの身も危険になってくる中で、山小屋に移動することになる。

アラムが封印した過去

言葉を封じられた主人公アラムが、潜伏先の抑圧された生活の中で見つめる過去。
それは、第一次大戦でのアルメニア人迫害の記憶。

山小屋に映ったアラムはさらに極限の孤独に追いつめられる。
深い森、そして真っ白な霧の中で、何度も幼少期の記憶が蘇ってきて…

深い森の静かな風景、雨、深い霧、穏やかさが、アラムの孤独をより一層際立たせていて、観ていてとても辛かった。

詩的な映像美

登場人物たちが置かれた状況はとにかく息が詰まりそうで、最後まで見応えあり。
自由求める姿にかかる深い霧は、ハッピーエンドを願う視聴者に暗い影を落としていて、観ていてとてもしんどい。
ただ、全てのカットが絵画を観ているような、そのカットにまた別のカットを重ねて、たくさんの層になって襲い掛かってくるような、静かに胸に沁みる作品になっています。

Nothing

登場人物たちが何かを言いかけて「Nothing」と口をつぐむシーンがとても印象的。
マイノリティーたちが強いられた言論の統制、迫害の歴史を、現代に生きる私たちが「Nothing」にしてはいけない、口をつぐむことなく伝えていかなくてはいけない、というメッセージも感じられました。
過去の自分と向き合う、過去から教訓を得る、なかなか難しいことだけど。