「福岡国際映画祭2016」カテゴリーアーカイブ

クエン 〜さらば、ベルリンの壁よ〜(ベトナム) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「クエン 〜さらば、ベルリンの壁よ〜 / Farewell, Berlin Wall」

★★★☆☆

邦題 クエン 〜さらば、ベルリンの壁よ〜
英題 Farewell, Berlin Wall
製作国 シンガポール・マレーシア
製作年 2015年
監督 グエン・ファン・クアン・ビン
上映時間 108分

<あらすじ-公式サイトより->

激動の欧州を生きるひとりの女性

80年代、東側ヨーロッパの深刻な経済危機により、多くのベトナム人労働者や学生は非合法に西ドイツへ向かっていた。道中、若妻のクエンは密入国ブローカーの画策で夫と引き離されてしまう…。時代の流れと男たちに翻弄されるクエンの人生を軸に描く、ベトナムでは珍しく暗く冷たい異色の恋愛ドラマ。

1989年ベルリンの壁崩壊直前のヨーロッパ

経済状況の悪化から、東ドイツから西ドイツへの密入国をすために、闇業者を利用していたクエンと夫。
東欧側から西側に逃げる途中で、ガイドの男がクエンに一目惚れし、手元に置いたことで翻弄されるクエンの人生。
ベトナムの社会派映画なのかなぁ~と思っていたら、政治的背景を盛り込みつつ、筋はメロドラマ、そして予想以上にマフィア映画でした。

クエンの魅力

女性から見てもクエンさん本当に透明感があってお綺麗なんです。
料理も上手そうだし…手元に残したくなるのは分かります!
見た目だけでなく、奥ゆかしい感じ、寡黙に耐える感じ、芯の強い感じ、すべてがパーフェクトですね。
最終的には、身勝手な男たちに翻弄されながらも、自分の生きる道を見つけ、背を向けて歩き出す姿には感動です。

だけどねぇ。
クエンさんに甘えすぎなんだよ、男どもは!って心の声が漏れちゃいましたよ。
※助けてくれるドイツ人男性以外。

俳優さんたちが気になります

個人的にはマフィアの抗争パートがなかなか良かったです。
俳優さんたちも親近感の沸くお顔立ちで。
クエンの夫役の方は今岡誠に似てました~。

「クエン」という原作小説の映画化ということで、ドイツで30年生活した作家グエンさんの作品だそうです。
そして監督のお名前もグエンさんです。

ベトナム人難民たちが置かれた背景や事情は、日本人にはよく分からなくてポカーンなのですが、そこらへんがもう少しわかると良かったのかもしれませんね。

風は記憶(トルコ・仏・独・ジョージア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「風は記憶 / Memories of the Wind」

★★★★☆

邦題 風は記憶
英題 Memories of the Wind
製作国 トルコ・仏・独・ジョージア
製作年 2015年
監督 オズジャン・アルペル
上映時間 126分

<あらすじ-公式サイトより->

それぞれの心に閉ざされた記憶

第二次大戦中のトルコ。共産主義者の主人公は、反抗分子として政府から追われていた。危険なイスタンブールから脱出しソビエトへ亡命するため、国境近くの山小屋に潜伏。そこには初老の男性と若い女性というワケありげなふたりがいた…。抑圧された人々の秘めた想いを詩情あふれる映像美で描く。

舞台は第二次大戦下のトルコ

記者(翻訳家?)で画家の主人公アラムは、共産主義者であることから政府から終われ、ソビエトとの国境近くの村に潜伏した。
匿ってくれる初老の男と若い女、緊張感のある空間。
潜伏先の村でも、政府によって潜伏者が次々と捕らえられ、アラムの身も危険になってくる中で、山小屋に移動することになる。

アラムが封印した過去

言葉を封じられた主人公アラムが、潜伏先の抑圧された生活の中で見つめる過去。
それは、第一次大戦でのアルメニア人迫害の記憶。

山小屋に映ったアラムはさらに極限の孤独に追いつめられる。
深い森、そして真っ白な霧の中で、何度も幼少期の記憶が蘇ってきて…

深い森の静かな風景、雨、深い霧、穏やかさが、アラムの孤独をより一層際立たせていて、観ていてとても辛かった。

詩的な映像美

登場人物たちが置かれた状況はとにかく息が詰まりそうで、最後まで見応えあり。
自由求める姿にかかる深い霧は、ハッピーエンドを願う視聴者に暗い影を落としていて、観ていてとてもしんどい。
ただ、全てのカットが絵画を観ているような、そのカットにまた別のカットを重ねて、たくさんの層になって襲い掛かってくるような、静かに胸に沁みる作品になっています。

Nothing

登場人物たちが何かを言いかけて「Nothing」と口をつぐむシーンがとても印象的。
マイノリティーたちが強いられた言論の統制、迫害の歴史を、現代に生きる私たちが「Nothing」にしてはいけない、口をつぐむことなく伝えていかなくてはいけない、というメッセージも感じられました。
過去の自分と向き合う、過去から教訓を得る、なかなか難しいことだけど。

緑の野に黄色い花(ベトナム) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「緑の野に黄色い花/ Yellow Flowers on the Green Grass」

★★★★★

邦題 緑の野に黄色い花
英題 Yellow Flowers on the Green Grass
製作国 ベトナム
製作年 2015年
監督 ヴィクター・ヴー
上映時間 103分

<あらすじ-公式サイトより->

少年時代はいつもファンタジック

舞台は1989年、豊かな自然に囲まれたベトナム中南部の小さな農村。12歳の少年ティウは両親と弟トゥンと暮らしていた。弟は何をするにしても尊敬する兄と一緒。ある日、ティウがほのかに想いを寄せる女の子の家が火事になった…。緑と光に溢れた美しい田園風景の中、少年たちの目を通し、心の揺れや人間模様を瑞々しく描く珠玉作。

舞台は1989年のベトナム

貧しく小さな村に暮らす12歳の少年の成長を描く物語。
少年時代の美しい日々、恋の嫉妬と痛み。

無邪気にお兄ちゃんを慕う弟。
恥ずかしくて一緒にいられない少女。
成長期、繊細すぎて周りも自分も傷つけまくるお兄ちゃん。

広大で美しい風景に、登場人物それぞれの葛藤が見える。
お兄ちゃんがちょうど声変り時期の感じで、成長過程なのが分かるし、ただ美しいだけでは終わらない、ほろ苦さが残る作品になっているのは、ヴィクター・ヴー監督の手腕かと。

背中思いっきり叩いたらアカン

嫉妬心に駆られたお兄ちゃんが、弟の背中を棒で思いきり叩くシーンがあるんですが、もう途中から、背骨がピリピリしてどうにかなりそうだったよ…!

「あぁ…これ確実に圧迫骨折したなぁ~」と。
圧迫骨折を経験した身としては、1か月安静や!そしたら治るやで!
って弟くんを応援しました!

途中から座ったり歩いたり、ちょっと足を引きずってたのが気になったけど、最後には走ってたので、神経にも触ってなかったんだ、大丈夫だったんだなぁとホッと胸をなでおろしました。

骨折し動けなくなった弟くんでしたが、捕らわれのお姫様が会いに来てくれた!とだんだん元気を取り戻していくあたり、空想することが子どもにとって心の拠り所にも力にもなる、ということも描いていて良かったなぁと思いました。
捕らわれのお姫様も同様に。

グエン・ニャット・アン原作の映画化

日本では「つぶらな瞳」という邦題で翻訳されているベトナムの作家グエン・ニャット・アンの2010年発表のベストセラー小説なんだそうです。
子供の目線から見た世界をみずみずしく表現しているそうで、機会があれば読んでみてもいいかも。

エンドロール

エンドロールは、切り紙風CGアニメに。
ちょっと動きが早くて目で追えない(疲れてたからかな?)感じだったんですが、すごく素敵でした。
ヴィクター・ヴー監督は越僑(在外ベトナム人)なので、感覚も少し違うかもしれない、と思いました。
2017年オスカー外国語映画賞のベトナムからの推薦作品にもなっているようで、日本公開も待ち遠しいです。

1989年の日本

1989年で12歳の設定なので、お兄ちゃんは私と同世代になるんですが、日本とベトナムではだいぶ様子が違いますね。
1989年(平成元年)は、バブル景気の後半のほうですが、すごく上向きの時代です。

任天堂「ゲームボーイ」発売、ジブリ「魔女の宅急便」が21.5億円の大ヒット、トシちゃんの「教師びんびん物語」を観て、プリプリの「Diamonds」を歌ってた。
吉本ばななの「キッチン」、村上春樹の「ノルウェーの森」はみんな読んだし、流行語は「オバタリアン」「オタク」「24時間タタカエマスカ」「NOと言える日本」などで、ソウル・オリンピックが開催され、手塚治虫が亡くなった年でもありました。

私は当時5年生だったんですけど、普通に小学校に通い、普通に勉強し、普通に遊んでました。
一番思い出すのは「明日来るね」と言って帰った祖母が次の日に交通事故で死ぬというアクシデントがあったこと。その大きな思い出(?)に紐づけされて思い出される記憶はまぁあるかな~、大した思い出じゃないですけど。
皆さんの1989年はどうですか?

スキャンダル(ベトナム) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「スキャンダル / Scandal」

★★★☆☆

邦題 スキャンダル
英題 Scandal
製作国 ベトナム
製作年 2012年
監督 ヴィクター・ヴー
上映時間 103分

<あらすじ-公式サイトより->

芸能界に巣食うブラックマジック?

モデルのリンは若き実業家と結婚をし、一躍トップスターの座をいとめる。だがライバル、チャミーが夫の前に現れるや否や、その座は危ういものとなる。やがて彼女は謎の頭痛に襲われ、身辺でも奇妙なことが起き始めた…。これは誰かが仕向けた“呪い”なのか?きらびやかな芸能界を舞台に描くサイコスリラー。

サイコスリラーなホラーなんですよ

ベトナムの芸能界を背景にした性悪女同士の泥試合。
負の連鎖がすごいですねー、エスカレートすればするほど、もうなんだか分からなくなってくる。

「相手に呪いを掛けることが芸能界では普通なんだよ」って真面目な顔して言っているあたり、想像の斜め上をいってます。
呪いを解きに行くシーンもなかなかホラー。

自分の中にある野望・欲望は、自分を滅ぼすことになってしまった、という怒涛の展開はなかなか見応えがあるんですが、二人を転がしていた真犯人の意図は不明。
転がして遊んでたってだけかなぁ?

どちらにも感情移入できないのは何故か?

うーん…随分(いや、ちょっとだけ)悩んだんですが。
トップモデル役の割にあまりそう見えないっていうか。

ごめん!ちょっと不細工だからじゃない?
髪の毛もなぜかウィッグだし、アフレコしたのかな~って感じの声だったし。
最後はただただ、ヒロインを演じた女優さんに盛大な拍手を送りたくなった…あ、これも罠?

一番素敵だったのが、主人公のお友達でしたね。
こちらもアフレコっぽかったけど。

ヴィクター・ヴー監督のセンス

これを作るヴィクター・ヴー監督のセンスがちょっと怖いですよね。
緑の野に黄色い花」を撮った監督の作品だよ~と言われても「ふぁ?」ってなるほどの狂気の地獄絵(笑)ですもん。

これ すなわち
マッド・マックス」を撮った監督が「ベイブ」を撮ったんだよ!
「火山高」を撮った監督が「クロッシング」撮ったんだよ!
くらいの衝撃ですよ。

梁木ディレクターがラブコールをずーっと送っていたらしい、ヴィクター・ヴー監督 初来福!

ロスト・ドラゴン(ベトナム) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「ロスト・ドラゴン / The Lost Dragon」

★★★☆☆

邦題 ロスト・ドラゴン
英題 The Lost Dragon
製作国 ベトナム
製作年 2015年
監督 クーン・ゴー
上映時間 100分

<あらすじ-公式サイトより->

プリンスを捜せ!地上に降りた最強仙女

平和な天宮、竜帝の宮殿を突然黒魔王が攻撃。その戦いですべての男子の仙神を失っていた。時が経ち竜帝も疲弊し後継者の誕生を待ちわびていた。その竜太子が生まれるはずの大切な玉が、ひょんなことで人間界に落ちてしまった。太子を捜し出すため、ふたりの仙女が現代のベトナムの地に降り立たった…。

ベトナムの旧正月(テト)用 娯楽コメディ

平和な天宮の仙女といえど、仲にはドジッ子もいるんですね。
そのドジッ子が竜太子が生まれるはずの大切な玉を下界に落としたもんだから、さぁ大変。
天宮の3日間は下界では30年らしく、早く探さなきゃ!と、仙女長とドジっ子の二人の仙女が下界で人探し。

仙女長はかなりのクールビューティ、出来る女!って感じなのですが、下界に降りた途端出来ない感じになるんです。
ドジっ子のほうは、下界に降りた途端、潜在能力発揮!
最終的には、ふたりは自分たちなりの幸せを見つけてハッピーエンド。

何も考えなくていい、軽く楽しめる映画。
迷いのない馬鹿馬鹿しさが逆に清々しくて好き!
FIFFの息抜きにピッタリの映画なのでした。

最初のCGすっごいよ!

ここで全予算使っちゃったんじゃない?大丈夫?ってくらいのCG満載です。
悪役のCGは手抜きすぎ、もうちょっと頑張ってwww!

最初は少~しだけ悪い予感がしたんですが、天宮と下界とでのカルチャーギャップあり、ドタバタあり、恋愛ありで娯楽要素がたくさんで面白かったです。
あ。ベトナムのサーカス見てみたいなぁって思いました。

ショートシンポジウム聞きました

超人X」のズン監督が登壇。
ズン監督の最初の仕事は、なんと400ドルの報酬だったそう。
映画を作る時は、1~2年ほど暮らせる収入を確保して撮ったりしてたんだそうです。

「美脚の娘たち」は民間で作った初めての映画で、その音楽を手掛けたそうですが、予算がなかったため、映画音楽自体は無料で請け、サントラを出すことで報酬を得ることが出来た!
その報酬は今までで最高の報酬になったんですねー、とズン監督ニヤニヤしてたのが面白かったです。

現在、ベトナム映画界には海外の資本(主に中国・韓国)が入ってきていて、マージンが高すぎたりと色々問題があって、映画業界も大変な時に入っているそう。
映画人を守るための仕組みづくりとかに尽力していくとのことでした。

ハラル・ラブ(独・レバノン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「ハラル・ラブ / Halal Love (and Sex)」

★★★★★

邦題 ハラル・ラブ
英題 Halal Love (and Sex)
製作国 独・レバノン
製作年 2015年
監督 アサド・フラッドカー
上映時間 95分

<あらすじ-公式サイトより->

教義とともに愛して恋して…

開放的な国際都市でありながら、一方でイスラム教的制限も多いベイルート。そこに住む3組のカップルを通して、平凡な人々がコーランの教えを破ることなく、夫婦の問題や恋、男女の性的欲望に折り合いをつけようと奮闘する物語。ベールの向こうにリアルなムスリム世界も見えて来る傑作コメディ。

男女の煩悩は万国共通?

レバノンの首都ベイルートを舞台に、結婚や離婚や恋愛を描く上質コメディ。
イスラムのカップル3組を通して、コーランの教えを破ることなく、自分たちの幸せを模索していく人々の姿をユーモアたっぷりに描いています。

経典による性教育、一夫多妻制、簡単に夫から離婚可能、短期契約婚というシステムなど知らないことだらけだったし、ムスリムの戒律がどのように人々の生活の中にあるのか、SEXも含めた男女関係の細部まで描かれていて、本当に興味深かった!

登場人物たちは、全員が超真剣。
人間どこの国でも変わらないなぁ、としみじみ。
とにかく笑える!

Q&A聞きました


ムスリムの女性たちは、外出時にチャドルやヘジャブを身につけているためか、身も心も保守的で不自由そうなイメージが強くあるんだけど、現実のレバノンの女性たちは、驚くほど明るく進歩的で、人生を謳歌している感じが素敵でした。

伝統的家族の堅苦しさもあったりと少しシリアスな場面もあるのだけど、イスラム教徒の自由な価値観に驚かされると同時に、女性たちのユーモアと機転にニヤリとさせられるのも良かったー。

ポスターにも描かれているとおり、表面上は違うように見える人たちも、実はベールの中は同じ人間なのだと、気付かされる作品になっているんだけど・・・
うん。下ネタが多い(笑)
ヌーヌーはもう頭から離れない!

イスラムの女性の恋愛観をちょっと覗き見

イラン生まれでフランス在住のマンガ家、マルジャン・サトラピの『刺繍──イラン女性が語る恋愛と結婚』をご覧あれ。
封建的な空気にがんじがらめにならず、自由に心を羽ばたかせているイラン女性たちの姿を見ていると、自然に元気がわいてくる一冊です。
ダリン・ハムゼさん曰く、レバノンとイランは少し離れている(レバノンはイスラエルの隣の小国)んだけど、恋愛の価値観はとても似ているらしいので、読んでからこの映画をみると、なるほど!となることもアリ。
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福岡観客賞 受賞おめでとう!

私も文句なしの星5つ投票。
納得の観客賞受賞ですねー。
主演のダリン・ハムゼさんのスピーチはこちら

くるみの木(カザフスタン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「くるみの木 / Walnut Tree」

★★★★★

邦題 くるみの木
英題 Walnut Tree
製作国 カザフスタン
製作年 2015年
監督 エルラン・ヌルムハンベトフ
上映時間 81分

<あらすじ-公式サイトより->

ユーモアと優しさあふれる人間賛歌

カザフスタン南部の、のどかな村を舞台に、若いカップルを中心に繰り広げられる結婚と出産にまつわるエピソードを描く作品。ストーリーというより、そこに生活するシンプルな人々のライフサイクルを、淡々とユーモラスな語り口で映し出す。2015年の釜山国際映画祭でNewCurrent賞を受賞した。

人々の日常を見つめ続けている「くるみの木」

のどかな田舎。くるみの大木がある一軒の家。
くるみの収穫をしている息子に母親は「明日にも嫁を連れて来るんだよ、孫の顔を見てから死にたいもんだ」と言い、素直にうなづく息子。
息子は意中の相手に合意の上で誘拐婚をするために友達を誘って出かけていきます。

登場人物の関係がすぐには呑み込めなくて、最初、登場人物がバラバラのパズルを眺めているようだったのだけど、カザフスタンの人たちが常に淡々としていて、ひたすらゆるい村の人々の日常が実にユーモラス。
それぞれの生活の一部を覗いているような気分になります。
夢か現実か分からないような幻想的な映像はエッジが効いているし、少しすっとぼけているのが愛らしい。

一組のカップルの結婚の顚末を通して語られるカザフスタンの人々の日常を「くるみの木」になったつもりで観るといいよ!

カザフスタンって文明のクロスロードなのかも

人間といい動物といい、いろんな民族が入り混じって暮していて、複数の宗教が混在しているように見えました。
最初、男の子が割礼してて、妹が心配して泣きそうになってるシーンからの火事のシーンは、本当におかしくて笑ってしまった。
全体的にコメディ・タッチで、随所に笑えて、最後はなんだか「ほんわー」と幸せな気分になるこの「くるみの木」。
カザフスタンの映画、今回も大当たりでしたねー。

ポスター

3人は友達で、右から歌手を目指す青年、消防士、この物語の主人公(?)ガビット(求婚する男)です。
で、この3人が乗っているこのバイク、後ろに大きな荷台がついてまして。
いやもうこれ、バイクじゃないよねー?軽自動車くらいの感じあるよねー?
っていうツッコミはともかく、このバイクは色々と大活躍で、荷台には人が3人くらいは乗れますよ。

大芝居(韓国) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「大芝居 / The Great Actor」

★★★★☆

邦題 大芝居
英題 The Great Actor
製作国 韓国
製作年 2016年
監督 ソク・ミヌ
上映時間 108分

<あらすじ-公式サイトより->

ベテランが役者魂をかけた大喜劇!

しがない舞台俳優のソンピルが突如、話題作の重要な役に抜擢された。しかし所詮は脇役風情、うまく演じ切れるわけがない。さらには予期せぬアクシデントに見舞われ降板の危機に直面する。そこでソンピルは一世一代の大芝居に打って出た!ヒット作では必ず顔を見る名脇役オ・ダルスが主演を務める。

大俳優を夢見る20年目無名俳優チャン・ソンピルの物語

児童劇「フランダースの犬」のパトラッシュ役専門で20年目、大学路(テハンノ)で劇団員として伝統的な演劇を守っているソンピル。
劇団生活を共にしたソル・ガンシクが国民的俳優になるのを見て、いつか自身も大俳優に!と思い続けています。

紆余曲折あり、ジレンマを乗り越えて、大事なもの(こと)が見えたときのソンピルの笑顔は、うまくいかない時期でも「やり続ける」ことが、最終的には実を結ぶってことを教えている気がして、すごく良かったです。

名脇役オ・ダルスって誰よ

韓国では、名脇役=オ・ダルス ってくらいの俳優さん。
国際市場で逢いましょう」にも出演。
鼻の下のほくろが特徴的、一度見ると忘れない、それが オ・ダルス。

この オ・ダルスの初主演作のこの作品。
ストーリーでも主役じゃないところがなんかうまいなって思ったり。

この映画には他にも有名俳優が出てまして、私が大好きな「グエムル」に出てたユン・ジェムンがソル・ガンシク役で出ています。

Q&A聞きました


ソク・ミヌ監督、ユン・ジェホPDが来福。
パク・チャヌク監督の助監督を⻑年勤め、本作で⻑編監督・脚本家としてデビュー。
「オールド・ボーイ」でオ・ダルスのファンになった監督が「いつか自分が映画を撮る時に主演してほしい」との約束を果たしてくれた裏話をしてくれました。

アニメ「フランダースの犬」の「ランランラーン、ランランラーン」の歌を歌うシーンがあるんだけど、ソク・ミヌ監督も子供の頃に「フランダースの犬」を観ていたんだって。
みんなが口ずさむことができるあの歌の世界観を壊さないように、同じ音楽を使ったらしい。私も一緒に口ずさんだし~!

タイトルは原題のまま「大俳優」でも良かったんじゃないかなーって思うけど、どうなのかな~?
笑いあり、涙あり、両足から血だって出しちゃうし、骨折だってしちゃう。
最後は感動、素直にエンターテイメントとして楽しめる、韓国映画はやっぱりこういうの「ウマイ」の一言。

預言者ムハンマド(イラン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「預言者ムハンマド / Muhammad, the Messenger of God」

★★★★☆

邦題 預言者ムハンマド
英題 Muhammad, the Messenger of God
製作国 イラン
製作年 2015年
監督 マジド・マジディ
上映時間 158分

<あらすじ-公式サイトより->

壮大なスケールで描く宗教史劇

これまで本映画祭で、多くの秀作を発表してきたマジド・マジディ監督最新作。預言者ムハンマドを通してイスラム世界を描く一大歴史絵巻。本作の音楽を『スラムドッグ$ミリオネア』などで知られるインドの作曲家・A.R.ラフマーンが担当。ラフマーン氏の福岡アジア文化賞大賞受賞を記念しての特別上映。

預言者ムハンマドって誰?

この映画を観る前に、ムハンマドやイスラム教について少しでも知っていると映画が面白くなる!というわけで、少しだけ書いときます。

ムハンマドは、イスラム教の創始者。
モーセ、イエスその他に続く、最後にして最高の預言者でありかつ使徒と言われていて、ムハンマドが神からの啓示を受けたのが40歳頃(西暦610年頃)。
イスラム教は、ムハンマドを通じて人々に下したとされるコーランの教えを信じ、唯一絶対の神(アッラーフ)を信仰しています。

イスラム教の誕生は紀元7世紀、キリスト教は紀元1世紀、仏教が紀元前6世紀ということなので、歴史的には少し新しめってことになりますね。

預言者ムハンマド、圧巻の160分

ムハンマドの誕生から少年時代を描いた歴史ドラマ。
イスラム世界、イスラムの教えの根本を訴えていて、迫力あるシーンもあり、見応えのある160分。

イスラム教は、唯一絶対の神(アッラーフ)を信仰しているので、主人公ムハンマドの顔(表情)は赤ちゃんの時からずーっと見えないようにしてあるのも興味深くて、映像と音楽、セリフで魅せていて良かったです。
ムハンマドが神からの啓示を受けたのが40歳頃とのことなので、映画の中では「特別な子」としてスポットが当たってはいるんですけども、ムハンマドを巡る周りの大人たちのドラマとも言えそうでした。

音楽も映像も衣装も素晴らしかったです。
音楽は「スラムドッグ$ミリオネア」で数々の賞を受賞しているA.R.ラフマーンが担当。
福岡アジア文化賞受賞2016を受賞したとのことで、ラフマーンさんが来福されていました。

実は3部作らしいよ

調べたら全3部作らしい…
この1作目を7年かけて作ったらしいので、ちょっとこれどうなるんでしょうか。
2部、3部も期待ですねー。

チャールトン・ヘストンの「十戒」「ベンハー」とか好きな方は、観られるとよろしいかと思います。映像的には「ロード・オブ・ザ・リング」や「300-スリーハンドレッド-」とか、そっち系好きな方も。

エチオピアの王のイメージってまさにあんな感じだよなぁ~
「ロード・オブ・ザ・リング」のじゅう遣いのあの目張り入れてゴージャスな感じ。
だからこそ、イスラムの質素な感じが映えるのだけどもー。

私はすごく面白かったです。
160分あっという間!

再会の時~ビューティフル・デイズ2~(インドネシア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2016 –

「再会の時~ビューティフル・デイズ2~ / What’s With Love 2」

★★★★☆

邦題 再会の時~ビューティフル・デイズ2~
英題 What’s With Love 2
製作国 インドネシア
製作年 2016年
監督 リリ・リザ
上映時間 125分

<あらすじ-公式サイトより->

大人になったふたりの恋の行方は?

2002年製作の青春ロマンス映画「ビューティフルデイズ」の続編。14年後、当時高校生だった主人公たちもそれぞれ人生を歩んでいた。結婚を控えたチンタは、女友だちたちと古都ジョグジャカルタを旅行する。その時偶然、NYで暮らすかつての恋人ランガが、母親に会うためにジョグジャカルタを訪れていた…。

日本劇場公開2005年「ビューティフル・デイズ」の続編。
オープニング上映での鑑賞。

↓↓↓ネタバレ注意↓↓↓

まずは「ビューティフル・デイズ」を観ないと


女子高生チンタは、仲良しグループのリーダー的存在。
詩を書くのが得意なチンタは仲間から「校内作詩コンクール」の優勝は今年も決まりだと思われていたが、優勝したのはランガだった。
チンタはランガを意識し次第にひかれていくが、ランガと親しくなればなるほど、それまで仲良く付き合っていた親友たちとの関係が、ギクシャク。
インドネシア語で「愛」と言う意味の名前を持つ少女チンタの恋と友情の悩みを描いた作品。
インドネシアで動員250万人というヒット作となった青春映画。

うんうん。
昔の記憶をグィーッと引っ張ってこないともう思い出せないんだけど、高校生の女子ってこんなんよねー。
あるある、って思いながら観ました。

青春映画の王道って感じの映画だったんだけど、
当時のインドネシア中流家庭ってこんな感じだったのか、とか、ランガの境遇なんかはすごく興味深かったです。
高校生たちは日本と全然変わらない。

で、今回上映されるのは、当時高校生だった主人公たちが時を経て、すっかり大人になっている二人のストーリなんですね。

「ビューティフル・デイズ2」なんです

「ビューティフル・デイズ」で最終的に遠距離恋愛で付き合うことになったチンタとランガだったんですが、14年の間にお別れ…。
みんな大人になっていて、それぞれの生活があるけど、高校の頃の女子友達とは今でも仲良しのチンタ。
そんなチンタは新しい恋人にプロポーズされ、結婚することに。
そこでランガの登場です!

ランガはやっぱり昔のまま癖のある男だし
チンタは気が強いところは変わっていない女で

人はそんなに簡単には変われないし
気付いたときにはもう遅いってこともあるぞ、そこに気付けるかどうかチンタ!
ランガは気付いてるんだけど、詩で伝えるって…あーもうじれったいわ!
二人とももちょっと成長してようよーってちょっと思ったんだけど(笑)

二人がジョグジャカルタを街歩きするシーンはすごくイイです。
人々の生活も垣間見えるし、素晴らしい風景と二人がすごく絵になるので素敵。

たぶん。
リリ・リザ監督が、チンタとランガにずっと恋してて、14年の時を経て撮った作品なんじゃないかな、と勝手に思って、勝手にほっこりしています。
王道のラブストーリーを観たい方はぜひ。

「ビューティフル・デイズ」を観てから「2」を観ると
このシーンあったなぁ~、とか思いながら観られるので、どちらも観たほうがイイです。

昨年上映の「黄金杖秘聞」に出演、ランガ役のニコラス・サプトラさん、
チンタ役のディアン・サストロワルドさん、他俳優さんたち、
リリ・リザ監督、ミラ・レスマナプロデューサーも来福されていて、期間中に観る方はQ&Aもご参加あれ。

邦題の「ビューティフル・デイズ」はどーもピンと来ない

インドネシア語で、チンタ=愛 という意味らしいんです。
チンタ=愛 という主人公の名前を出した原題どおりに「チンタ(愛)に何があった?」のほうが良かったと思うのね…