夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

「夜は短し歩けよ乙女」

★★★★★

邦題 夜は短し歩けよ乙女
製作国 日本
製作年 2017年
監督 湯浅政明
原作 森見登美彦
キャスト 星野源/花澤香菜/神谷浩史/秋山竜次 ほか
配給 東宝映像事業部
上映時間 93分
公式サイト 夜は短し歩けよ乙女

あらすじ

所属クラブの後輩である「黒髪の乙女」に恋心を抱く大学生の「先輩」は、「なるべく彼女の目に留まる」ことを目的とした「ナカメ作戦」を実行する日々を送っていた。個性豊かな仲間が巻き起こす珍事件に巻き込まれながら季節はめぐっていくが、黒髪の乙女との関係は外堀を埋めるばかりでなかなか進展せず……。

森見登美彦 × 湯浅監督 × 中村佑介 × アジカン

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大好きな森見登美彦さんの小説のアニメ化、そして湯浅監督の13年ぶりの新作ということで、すごい期待してました!
森見登美彦さんと湯浅監督、イラストレーターの中村佑介さんのタッグと言えば、フジの深夜の『ノイタミナ』枠で放映されていた「四畳半神話大系」なんですけども、このお三方のアートでアヴァンギャルドでシュールな感じがギュッと詰まったこのアニメーションが「夜は短し歩けよ乙女」でまた観られると思うとね…もう期待しかないでしょう!

「夜は短し歩けよ乙女」アニメ版のキャラクター原案は、原作小説のカバーイラストを手掛けた中村佑介さんがやってることも含めて、アジカンが主題歌を担当することなど、完全に「四畳半神話大系」を踏まえた作りの映像化というのも期待をさせる要素でして、そりゃぁもう前売券を買って映画館へ走りましたよ!
※「四畳半神話大系」とクロスオーバーする要素が非常にいっぱい仕込まれているので、「四畳半神話大系」を観るとめちゃ楽しめます。

四季が移り変わっていく4つのエピソード

原作小説では、四季が移り変わっていく、1年(春、夏、秋、冬)の4つのエピソードがオムニバス的に分かれているんですね。
今回のアニメ化では、その4つのエピソードを一晩に起こったことにしているんです。
いろんな体験が凝縮された一夜「まるで1年のような一夜」のストーリーです。

人生の中で特別に濃い時間、夢のようなそんな特別な時間を、観てる方にも体感させてくれる作りになっていて、93分の上映時間はあっという間に終わっちゃいます。
時間の感覚っていうのは、人それぞれに違うんだっていうことも見せてくれているので、その辺の作りもうまいあぁと思いました。

春パート

京都の街並み、ハシゴ酒、詭弁論部の詭弁踊り、すべてが新しい体験をする黒髪の乙女。
多幸感にあふれたパートで、観てる方も楽しくなっちゃう。

夏パート

古本市。
古本を目の前に乙女大盛り上がり、分かります、本のアーカイブ見てるだけで幸せ!
先輩は乙女を追ってるんですけども「四畳半神話大系」の「小津」を思わせる、古本市の神様の子供。
先輩にボーンとぶつかって、ソフトクリームをくっつけちゃう。わざわざ股間にバーン!ってくっついて、そそり立っている…w
そこで児童虐待を疑う古本屋のおじさんの顔のアップがしばらく続く夏パート。笑えます。

秋パート

秋と言えば学園祭。
ミュージカル化されたゲリラ演劇「偏屈王」、これは「四畳半神話大系」の、映画部の城ヶ崎先輩のエピソードを舞台化しているのを見せられるんですけども(笑)
ちょっと無理がある言葉の詰め込み方で始まってたりして「日本語ミュージカルあるある」やっぱりおかしいな!って笑っちゃう。
日常を飛び出して、ミュージカルの非日常な雰囲気を、祭りの醍醐味にクロスオーバーさせててテンション上がります。
大学の中だけはアナーキーな感じがすごく伝わってきて、このパートのパンツ総番長、学園祭事務局長もイイです!

冬パート

先輩の内的葛藤。
絵の見せ方と声の表現だけで魅せてるパートです。

ここは風邪をひいて寝込んでいるっていうパートなんですけど。
風邪をひく、というのも非日常であるわけで、逆の視点で見てみると「風邪もワクワク」だったりするっていう見せ方です。
大人になってからは「風邪がワクワク」ってのはあんまりないんだけど、子供の頃は「風邪はワクワク」でしたねー。

ここはもう冬パートですから、アニメも最終局面に向かっているんです。
妄想がバーッと広がっていって、大アクションシーンが始まって…もう目が離せません。

声優

先輩は星野源がやってまして、良かったです。
セリフが長いんですよね~、森見登美彦作品は!
大変だったと思うんですけど、ハマってました。

そして、本編の主人公、黒髪の乙女。
花澤香菜さんが素晴らしいです。
黒髪の乙女、ぶっちゃけ天然でちょっとクレイジーなんだけど、嫌味なく愛すべきキャラに仕上がったのは花澤香菜さんのおかげだと!
「PSYCHO-PASS サイコパス」の常守朱もそうなんですけど、愛らしい声の中に一本筋が通ってる声っていうか、本当に説得力あって良かったです。

パンツ総番長は、ロバートの秋山です。
学園祭事務局長は、神谷浩史さん。
ミュージカルパートでの掛け合いも必見です!

まとめ

夢を見ているように、脈絡なく連なり転がっていくこの4つのお話が、黒髪の乙女を通して最終的には繋がっていく。
全ては関わり合っている、「これも何かのご縁」で締められる最後、ポトンと落ちる感じです。
「現実のこのクソみたいな世界も、実はものすごく楽しくてワクワクする場所なのかも?!」と思えるような作品です。

全体に夢を見ている感じ、凝縮されていたあの時、みたいな思い出を持っている人なら、すごく楽しめる93分です。
湯浅政明さんにしか作れない、オリジナルでフレッシュな、アニメらしいアニメ。
そしてアニメーションならではの躍動感、自由さもあって「あ~、ワクワクする!」ってなります。

パンフレットも日めくりカレンダーも一見の価値ありですよ~。

現在公開中の湯浅監督の「夜明け告げるルーのうた」はアヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞を受賞しています。
「夜明け告げるルーのうた」に「夜は短し歩けよ乙女」ぜひ観てみてください!