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オズの魔法使 ~The Wizard of Oz~

「オズの魔法使 / The Wizard of Oz」

★★★★★

邦題 オズの魔法使
英題 The Wizard of Oz
製作国 アメリカ合衆国
製作年 1939年
監督 ヴィクター・フレミング
上映時間 101分

<あらすじ>

カンザスの農場に住む少女ドロシーは「虹の彼方のどこかに」よりよい場所があると夢見ている。
竜巻に家ごとオズの国に飛ばされたドロシー。
そこで出会った北の良い魔女グリンダは「黄色のレンガ道をたどってエメラルド・シティに行き、オズの魔法使いに会えば、カンザスへ戻してくれるだろう」とドロシーに助言してくれた。
ドロシーは、知恵(脳みそ)がない案山子、心を持たないブリキ男、臆病なライオンと出会い、共に旅をし、たどりついたオズの国から家に帰ろうとする。

「オズの魔法使 / The Wizard of Oz」

言わずと知れたファンタジーの名作。
有名な作品なのに、今まで観なかった自分、反省。
1939年製作というのにも驚き。

「脳みそがないカカシ」は「頭脳」を、
「鍛治屋が心を入れ忘れたブリキの木こり」は「心」を、
「臆病なライオン」は「勇気」を求めて、
オズの魔法使いに会いに行く旅に出る。

ドロシーと旅の仲間は、道中、色々な試練を乗り越えて、オズの大王に会う。
そして自分が欲しいと思っていたもの(「頭脳」「心」「勇気」)を要求するのだが、
「足りないと思っていたものは、すでにある」と指摘され、気付く。
「最初からすでに持っている」と。

事実、冒険中に一番頭を使っているのはカカシで、
一番感情をあらわにしているのは木こりで、
一番勇敢に戦っているのはライオンなのだ。

自分の魅力や個性は、自分ではなかなか気付きにくいのかもしれないし、
自分の能力に自信を持つきっかけは、誰か後押しであるのかもしれない。

最初はモノクロなんですが、オズの国に飛ばされた瞬間からカラーに。
その演出は「おぉー!」と感嘆してしまうくらい。

その後のオズの国のカラフルな世界は観ていてとても楽しいし、
個性的なマンチキンの人たちや旅の仲間たちとの冒険はワクワクする。

ドロシー役のジュディ・ガーランドは愛らしいし、
カカシの足がヨロヨロしてる感じとか、ライオンの尻尾もさりげなく動いていたり、
メーキャップや特撮はずいぶん頑張っていて、今観ても違和感ナシ。

終盤の西の悪い魔女の館に潜入する場面は
「ロード・オブ・ザ・リング!?」みたいな予想外の緊張感!
(こっちが先なんですけどねー・・・w)

ジュディ・ガーランドが歌う「虹の彼方に」は名曲だし、
ブリキの木こりがラッパを鳴らすいきなりの一発芸?「ププッー」には大爆笑、
特典映像も見どころ満点の「オズの魔法使」。
自分探しをしてる人、人生に疲れた人は是非。

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奈良の「墨」

奈良といえば、奈良墨。
奈良では伝統的な墨作りが、今も手作業でおこなわれています。

墨は元々、中国から伝わり、推古天皇の時代には国内で作られていたという記録があります。
奈良時代に製造されていた墨は松煙墨(しょうえんぼく)で、その後、鎌倉時代に油煙墨(ゆえんぼく)の製造が始まりました。
江戸時代に入ると各地で製造されるようになりましたが、実績のある奈良に優秀な職人が集まったため、1300年にわたって奈良の伝統産業となったのです。

奈良では、墨を作っている会社が7件、墨職人(墨工)はたったの10人!
たった10人の墨職人(墨工)で日本の墨の90%を作っているそうです。

墨を作る時期は10月~3月までの約半年間
その間に墨職人(墨工)は、1日200~400個もの固形墨を作るそうです。

生まれて初めて訪れた奈良で「にぎり墨」を体験してきました。
「にぎり墨」も昔ながらの材料と製法で手作りされている質の良い奈良墨です。

訪れたのは、奈良のメインストリート、三条通りから小脇にちょっと逸れた所にある「錦光園」。
錦光園」では、上質の油煙墨(ゆえんぼく)で世界にひとつしかない自分だけの墨を作ることが出来ます。

墨の材料はこちら!

・ニカワ
・松煙(しょうえん)
・油煙(ゆえん)
・龍脳(りゅうのう)
・香料

松煙(しょうえん)は、赤松からしか取れない貴重な墨。
赤松というのは、周りに松茸が生える松です。日本の松茸は香りが良く高価ですよね。
そんな松茸が生えるところにしかない赤松を使って作る松煙(しょうえん)は、墨にするともちろん値が張ります。

油煙(ゆえん)は、植物の油から取る墨。
菜種油、胡麻油、椿油、桐油など。
菜種油を用いて作られた墨が最上だそうです。
※ちなみに墨汁は石油などの鉱物から作っています。

ニカワは、動物の骨・皮・腱などを水で煮た液を乾かし、固めた物質。ゼラチンです。
写真の左にあるのがニカワですが、固形の状態では全く匂いはないです。

松煙(しょうえん)や油煙(ゆえん)を取るには、材料を燃やして、蓋についたススを採取します。
燃やす器と蓋の距離が長ければ長いほど取れるススの量は少なくなるのですが、上質のススが取れるしそうです。そのススで作られた墨は上質でやはり高価な墨になるんだそう。
油煙(ゆえん)の方が色が濃く、松煙(しょうえん)は少しグレーがかっています。

龍脳(りゅうのう)は香料です。
墨を作る際にススをニカワで固めるのですが、ニカワの匂いが強いため、龍脳で香りを加えて臭いを消しています。龍脳は、ナフタリンの匂いがします。

香料は、墨職人が龍脳にムスクなどを混ぜてオリジナルで作っているものです。
錦光園の長野墨延さんもオリジナルで香りを作っています。
自分が作った墨だ!と分かるのは、磨ったときの香りで分かるそうです。

ついに墨づくりです。
墨の原料(油煙・ニカワ・香料)を練り合わせます。

墨の重さを計ります。

計った墨をシワがなくなるまで丸めます。

丸めた墨を棒状に伸ばします。

棒状に伸ばした墨を墨の型に入れます。

墨の型に入れたら、機械で圧力をかけます。

圧力をかけて型から外すとこんな感じ。

出来立ての墨は、こんなに柔らかい。

この墨をしっかり乾かすと縮みます。
型の8割くらいの大きさになりますね。

「にぎり墨」は、丸めた墨を握って作ります。
やさしく手のひらでつつみ込み、ぎゅっと握る。
出来たての墨は、弾力があって柔らかい、グミみたいな感触です。
手の型と指紋がついた、世界に一つだけの自分の墨ができました。

これを紙に包み、桐の箱に入れてもらいました。
自宅に持ち帰って、箱ごとタンスの中などに入れて最低3ヶ月はそのままで乾燥させます。
3カ月は絶対に開けてはいけません!!

乾燥した墨は、紙を取って使っても良し、そのまま置いて数年経ってから使っても良し。
長野墨延さんおすすめの使い方は、筆置きだそうです。
玄関に置いて脱臭にも出来るそうです。3ヵ月後の完成が楽しみです!

墨は古いほど良いと言われています。
人の成長と同じように幼年、少年、青年、壮年、老年期と成長し変化していくんだそう。
この成長過程も墨の大小、厚み、保管場所によって違いが生じるそうで、なんともウイスキーみたいですね!

錦光園 墨職人の長野墨延さん。
松煙墨(しょうえんぼく)、油煙墨(ゆえんぼく) の製法を守り続ける錦光園の6代目です。

商品は客間に調度品のように陳列されています。

それぞれの商品に墨の色見本があります。
水10滴に540回磨る とか書いてあります。几帳面(笑)。

私が買った墨は「玄香」という油煙墨
作って20年は経っているということで、私が15歳のときに作ったんですね。

さっそく磨って書いてみました。
磨り心地はとても素晴らしい、柔らかいので墨がよく下り、濃い墨がすぐに磨れる感じでした。
書き心地は、紙滑りがとても良くて、さらーっと書けました。
かすれもよく表現できて、ほどよくにじみも。

実は錦光園、7代目が継がないとのことで、6代目の墨延さんで工房を閉めるのだそうです・・・泣。
弟子もいるそうですが、働く期間が6カ月しかないこともあり、生活の保障ができないとのこと。
伝統を守り続けるというのは本当に大変なんですね。

そんなわけで墨職人の命「墨の型」も売ってあります。
私は大鵬の型を買いました。墨の香りもすごくします。たまりません!!!

墨は書画には不可欠なものであり、芸術品として高く評価されています。
墨で書かれた文字によって歴史が伝えられ、書が芸術として心に残る。
日本の文化を支えてきた墨、墨職人の皆さんに敬意を払わずにはいられません。
そして、手元にある墨もどんな風に成長していくのか、楽しみです。

錦光園
奈良県奈良市三条町547
TEL 0742-22-3319
http://kinkoen.jp/
にぎり墨は要予約。体験料は1500円。

THE SEA AND CAKE @ ROOMS

世界が愛すべきオヤジバンド「THE SEA AND CAKE」が、九州に初上陸!
ということで、行ってまいりましたROOMS。

良い海外バンドがたくさん来てる印象のROOMS。
ずっとずっと待っていたんだ、「THE SEA AND CAKE」を。

まずは聴いてみよう。

アーチャー・プレウィットは、静かに弾いてると思いきや突然ノリ出すという技を披露。
サム・プレコップは飲んでいても安定の歌声~。
ジョン・マッケンタイアは、ドラムを叩くその腕のタトゥーもすごくて、目力はもっとすごくてビビった!
一番前で聞いていたから、スタジオの録音みたいで良かったし、そしてみんなイケオジ~♪

ジョン・マッケンタイアがTシャツにはペンが付かないって言って、白いところにつ小さく書いてくれました。
これは洗っていいのか・・・悩。

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ひとり(カザフスタン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ひとり / Little Brother」

★★★★★

邦題 ひとり
英題 Little Brother
製作国 カザフスタン
製作年 2013年
監督 セリック・アプリモフ
上映時間 94分

<あらすじ>

ひとり佇む少年の孤独と愁いが胸に迫る

母親に死なれて以来、イエルケンは小さな村でひとりでたくましく暮らしている。子供だと思ってナメてかかる大人たちと闘いながら。そんなある日、実の兄が突然帰ってきた。喜びと幸せ。これで、ナメられないですむ。イエルケンはその兄を頼りにしようとするが…。必死に生きようとする少年の心根をわかってくれる大人はいない。ひとりぼっちの彼の矜持と孤立が切なく、健気だ。

「ひとり / Little Brother」

小学生のイエルケンは、なんと山の村で一人暮らしをしている小学生。
母親が亡くなったあと、父親は再婚し家を出て行ってしまった。
その父親は、1カ月に1回、食料などを持ってくる。
ご飯はその材料で隣の人が作ってくれる。

イエルケンはいつも一人で生活していて、日干し煉瓦を作ったりしている。
そんな彼に、周りの大人や学校の先生でさえも親切にはしてくれない。

健気に泣かずに頑張っているイエルケン。
そんなある日、都会の学校に行っているお兄ちゃんが里帰りすることに。
「これで皆を見返すことができる!」と嬉しくてたまらない。
お兄ちゃんに、相手を負かす寝技なんかを教えてもらったりする。

イエルケンはお兄ちゃんが喜んでくれるようなことを次から次にする。
お母さんの墓参りに行ったり、映画を観に行ったりもする。
映画は6人以上じゃないと上映しないと言われて、6人分の入場料を払ったり。

ところがこの兄ちゃん、里帰りの目的は「恋人」と「金」だった。
イエルケンに知り合いを回らせてお金を借りて来させる兄。
だけど、イエルケンは嫌な顔をしない。

山羊を盗まれたり、作った煉瓦のお金を払ってくれなかったり、金貸しの借金を背負わされたり、子供だからと言ってイエルケンを利用して騙したりするのだから、ホントとんでもない境遇だ。
兄でさえもイエルケンを利用して・・・。

結局、兄は弟から巻き上げた金を使い果たし、街へ戻って行ってしまう。
「バスの見送りがないと親戚がいない人のように思われる」と言うイエルケンは、兄の見送りに行く。

帰り道、お祭り帰りのピエロと出会うシーン。
馬鹿にされながら観客を笑わせているピエロ。
ピエロの顔を見損なったのだけど、悲しみを持つという意味を表現した「涙のマーク」があったのだとしたら、それはイエルケン自身だったのかもしれない。

ピエロにもらったハーモニカを少し吹いて佇むイエルケン。
最後には、イエルケンはまた「ひとり」になる。

初めて観たカザフスタン映画。
なんとエンドロールで「弟に捧げる」と書いてあった。
兄は監督だったのか!!!

イエルケンの暮らしが特に貧しいような描き方はされていないので、すごく悲しい気分になったりはしなかった。
とても健気でたくましいイエルケンが成長して、兄と一緒にお酒を飲み交わしていたらいいなぁと思った。
監督が来福していたら、質問攻めにあっただろうなぁ・・・。

——————————-
アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014、これで観た映画のレビュー全て書き終わりました。
(「sala(禁忌)」は日本公開になったらレビューする予定)
今年の鑑賞本数は15本。「予兆の森で」は二回観たから16本。

5点満点
予兆の森で」「シッダルタ」「ひとり」「絵の中の池

4点
ジャングル・スクール」「慶州」「タイムライン」「山猪温泉
ロマンス狂想曲」「私は彼ではない」「ブラインド・マッサージ

3点
神の眼の下に」「兄弟」「サピ」「sala(禁忌)」。

今年の作品は全体的に、自分のアイデンティティーとか、存在する意味を問うような内容が多かったという印象です。そして、ループするような感じ。
そしてやっぱりゲスト登壇があると、より映画の内容が分かって面白いです。

さて、アジアフォーカス・福岡国際映画祭。
来年は25周年ということで、さらに期待大です!

サピ(フィリピン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「サピ / Possession」

★★★☆☆

邦題 サピ
英題 Possession
製作国 フィリピン
製作年 2013年
監督 ブリヤンテ・メンドーサ
上映時間 102分

<あらすじ>

これは現実か?スーパーリアルな社会派ホラー登場!

冒頭から、ぐいぐい惹きつける。緊迫感あふれるドキュメンタリータッチの映像が、一気にリアル感を高める。陳腐になりかねない悪魔祓いという超常現象を、ニュース報道の世界を通じて描き出す。日常の中に侵入する恐怖が、悪夢のように観客を襲う。返す刀で、メディアの現実もえぐりだす。単なるホラーで終わらせないのがメンドーサ監督の凄さ。
※R18

「サピ / Possession」

テレビ局が舞台。
「悪魔憑きの取材」というストーリーの中、突然不可解で恐ろしい出来事が登場人物のみに次々と起こる。
ホラー要素は詰まってて、あ~!何か来る!と思った瞬間、次の場面では何事もなかったかのようにしていて・・・。
やらせや裏取引、醜悪なマスコミの裏面を描いて、権力という名の悪魔に取り付かれたのは自分たちではないのか、心の内で起きた何かをうまく表現しているなぁと思った。

テレビ局のプロデューサー役のメリル・ソリアーノさん。
劇中も「メリル」という名前で、すごくリアリティがあった。
本当にこんなプロデューサーいそう!っていう感じ。

個人的にはちょっと不完全燃焼の3点(エクソシストみたいな感じだと思って観たからなんだけど・・・)だけど、友人はもう一度観たいと言っていた。
フィリピンの街並みとか、心霊現象を信じる人たちとか、ひとつひとつを観れば興味深い映画だったのかも。
もう一度観る機会は来るのだろうか~。

Q&A記事

兄弟(フランス/グルジア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「兄弟 / Brother」

★★★☆☆

邦題 兄弟
英題 Brother
製作国 フランス/グルジア
製作年 2014年
監督 テオナ・ムグヴデラゼ
上映時間 98分

<あらすじ>

グルジア内戦を少年の視点から鮮明に描く

1990年代初頭、内戦の影が忍び寄る都市トビリシ。銃声が響き、街を逃れる人々も多い中、マイアは二人の息子を育てている。兄ギオルギは休校が続く中で、次第に悪の道に進む。弟ダトゥナは才能豊かなピアニストで、母と兄の誇りである。重苦しい時代、明るいダトゥナの存在はかすかな希望の光だった。ソ連からの独立を模索する小国グルジアの未来であるかのように。

「兄弟 / Brother」

映画は、グレン・グールドに憧れて
ピアニストを夢見る少年ダトゥナの弾くシューベルトの即興曲から始まる。
美しいシーンの中に、時おり銃声がひびく。

内戦の混乱と暴力に巻き込まれる兄弟。
いつ終わるか知れない混乱の中で、
ダトゥナも次第に笑顔を失い、ついには声も出なくなってしまう。

一方、ギオルギは弟思いの優しい兄だが、
祖国が変わっていくと同時に、兄も変わっていってしまう。

ダトゥナ(弟)が登場するシーン(ピアノを弾くシーン)は、安堵と静寂。
ギオルギ(兄)が登場するシーンは、都会の喧騒や革命の動乱。
といった感じで、この映画のコントラストになっている。

テオナ監督は、内戦時14歳だったのだそう。
国家によって、子どもたちが巻き込まれていく理不尽さ。
90年代グルジアの失われた世代を知るドキュメンタリー的な映画だった。

ダトゥナが声と笑顔を取り戻す時、兄も暖かい光に包まれる最後のシーン。
グルジアの子どもたちが明るい未来を取り戻せる日が来ると信じて。

弟役のダトゥナを演じるのは、本当にピアニストを目指す少年だそうで、
彼の綺麗で長い指に終始目が釘付けになった。

兄。公式パンフレットを確認したら、17歳とのこと。
あまりに恰幅がよかったので、17歳に見えなかったのは私だけかな・・・。
福岡市図書館のフィルムアーカイブに収蔵されるそうなので、また機会があればじっくり観たいと思う。

ディレクター懇談
QAもあったはずなんだけど、まだ記事になっていないよう。

ブラインド・マッサージ(中国/フランス) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ブラインド・マッサージ / Blind Massage」

★★★★☆

邦題 ブラインド・マッサージ
英題 Blind Massage
製作国 中国/フランス
製作年 2014年
監督 ロウ・イエ
上映時間 114分

<あらすじ>

中国第6世代の旗手ロウ・イエの最新作。

南京のマッサージ院を舞台に、そこで働く男女の愛と憎しみ、欲望と痛みなど、人間模様を苛烈に描く。見えない人間だからこそ、繊細な指の感覚が身体の痛みをとらえ、癒すことができる。1組のカップルが新入りとして働きだし、それまでの平穏な日常が一転、マッサージ院に緊張が走る。人間の希望と幻滅を凝視する、圧倒的な演出力。
※R15

「ブラインド・マッサージ / Blind Massage」

マッサージ治療院にく視覚障害者の物語。
障害者と健常者を混ぜて配役していて、とても生々しい。

盲人男女10人による、もつれ合い絡み合う人間関係。
見えないがために感じる不信感で、激しく争ったりする。
人間社会の普遍的な出来事を、視覚障害者を通して描くことで、感覚を研ぎ澄まして感じることが出来るような作品だった。

思いは一人一人違うけど、最後のシャオマーの笑顔とマンの佇まいは、
幸せは案外普通のことを寄せ集めたものなんだと気付かされる素敵なシーンだった。

マン役のホアン・ルーは「ロマンス狂想曲」のチン・ランもやっていた。
対照的な役なんだけど、個人的には「ブラインド・マッサージ」のホアン・ルーの方が好き。

山猪(いのしし)温泉(台湾) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「山猪(いのしし)温泉 / The Boar King」

★★★★☆

邦題 山猪(いのしし)温泉
英題 The Boar King
製作国 台湾
製作年 2014年
監督 クオ・チェンティ
上映時間 102分

<あらすじ>

山奥の温泉で繰り広げられる優しき人間ドラマ

奥深い山間の山猪(いのしし)温泉。ここで小さなホテルを営む夫婦がいた。強力な台風が襲い、一帯は壊滅状態となった。夫は台風の日に出かけて以来、行方知れず。ホテルも甚大な被害を受け、残された妻は途方に暮れる。そんな時、夫が知人宛に送ったパーティの招待状が届いた…その真意は?絶望的な環境の中、未来へと期待をつなぐ人々を温かいまなざしで描く。

「山猪(いのしし)温泉 / The Boar King」

この映画も実話に基づいたフィクションだ。
台風によって一夜にして破壊された故郷を離れるか、残って再建をするか。
この物語の主人公たちは「残る」ことを選んだ人たちの物語。

ビデオ撮影が趣味のロンは、台風の日のもビデオをまわし、その日以来行方不明になってしまう。
台風後の山猪温泉には、宅地開発をする業者が来て、残っている土地を買収している。
メイチュエは途方に暮れるが、ロンが生前に発送した知人宛てのパーティーの招待状と引き出物が届いたことが分かり、ロンが残したビデオを見ながら、夫がなぜそんなことをしたのかを考える。

「山猪温泉」は夫の夢だった。
それは、メイチュエの夢にもなるのだろうか。
残された人たちの選択は・・・。

多くを語らないメイチュエだが、夫に対する気持ち、山猪温泉への愛着、その芯の強さが伝わってくる。
義理の娘フェンにとっても、家族の絆を思い出させる父親のビデオ。
家族の幸せな時間を映したビデオはカラー、台風後の現在はモノクロで表現されている。
メイチュエとフェンの思いがひとつになったとき、希望の光が全てをカラーにするのだ。

最初の梅の花のシーン。
力強く咲く梅が、再建に向けて頑張っていこうという思いと繋がっていて、ロンからのメッセージのようにも受け取れた。

主演のルー・イーチンさんは「ピノイ・サンデー」にも出ていた女優さん。
ひょうひょうとしていて、芯が強い雰囲気の女優さんだと記憶している。
娘役のウー・イーティンさんは、小さくて可憐ですごく可愛らしい女性だった。

今回、二人とも福岡に来られていたのだけど、残念ながらQAには参加できず。
最終日の上映にて鑑賞。
福岡市図書館のフィルムアーカイブに収蔵されるそうなので、また観る機会がありそう。
もう一度観たくなる映画だった。

Q&A記事

ジャングル・スクール(インドネシア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ジャングル・スクール / The Jungle School」

★★★★☆

邦題 ジャングル・スクール
英題 The Jungle School
製作国 インドネシア
製作年 2013年
監督 リリ・リザ
上映時間 90分

<あらすじ>

学ぶことの素晴らしさを教えてくれたのは…

NGOで働くブテットはスマトラ島の森で暮らす子どもたちに読み書きを教えていた。ある日、森の中で倒れ、別の集落の少年ブゴに助けられる。彼の集落には読み書きできる大人がいない。そのせいで森の外の人間から不当な扱いを受けていると知ったブテットは……。実在の人物を主人公に、気鋭リリ・リザ監督が、自然、文明、教育、そして次世代に向け未来を穏やかな視線で問う。

「ジャングル・スクール / The Jungle School」

スマトラの熱帯林を舞台に「森の人」に読み書き計算を教えた女性教師ブテット。
その実話を元にしたリリ・リザ監督の「ジャングル・スクール」。

伝統と文明、そして教育とは何か。
なぜ知識(勉強)が必要なのか。
本当に住民たちのためになる支援がどういうものか。

学問が災いをもたらすという原住民の価値観も尊重し、
心から教育を望む子供の気持ちにも寄り添うブテット。
ジャングルで自然と共に生きる人々が、自分たちと森を守るための教育。
森の外と森の中をつなぐコミュニケーションとしての教育。
純粋で素直な子供たちに未来を託して。

最後は彼女の想いが実を結ぶ。
そして私たちも映画を通して「なぜ勉強するのか」「本当の支援とは何か」を考えるのだ。

とにかく、カメラワークが素晴らしい。
アニメーションも使っていて、子供が見ても分かりやすい内容。
そしてブテットにくっついて離れない二人の子供がとっても可愛い!

「ジャングル・スクール」主人公を演じたのはプリシア・ナスティオンさん。
2013年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された「聖なる踊子」の主演女優。

プリシア・ナスティオンさんとリリ・リザ監督、お二人とも去年は福岡に来ていたので、実は福岡で出会ってこの映画を一緒に作ったのかな!?
なんて思いながら鑑賞した。
素直に感動する、納得の観客賞受賞作品だった。

ディレクター懇談
福岡観客賞受賞おめでとう!