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黄金杖秘聞(インドネシア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2015 –

「黄金杖秘聞(おうごんじょうひぶん) / The Golden Cane Warrior」

★★★★☆

邦題 黄金杖秘聞(おうごんじょうひぶん)
英題 The Golden Cane Warrior
製作国 インドネシア
製作年 2014年
監督 イファ・イスファンシャ
上映時間 110分

<あらすじ-公式サイトより->

野望、陰謀、そして復讐。最強は誰だ!

インドネシア映画界を代表する監督リリ・リザとプロデュサーのミラ・レスマナが製作。
『聖なる踊り子』のイファ・イスファンシャ監督がオールスターキャストで放つアクション大作。
武術者の権威である黄金の杖をめぐって、格闘技アクションが炸裂。
武術の師匠は若い4人の弟子の中から、奥義を伝える後継者に一人の少女を選んだ。
しかし、それを不満とした二人の弟子たちとった行動は…。野望のため陰謀がうずめいていく。

「黄金杖秘聞(おうごんじょうひぶん) / The Golden Cane Warrior」

オープニング上映「黄金杖秘聞(おうごんじょうひぶん)」を観てきた。
リリ・リザ監督、主演のニコラス・サプトラさん、イケメン!

インドネシアの子供たちが熱中したコミックの神話的記憶の再現で、インドネシア映画界空前のスケールのアクション大作!
ワイヤーアクション、棒アクション(?)の連続に目が離せない。

主人公のダラは、秘技を習得し成長していくにつれて
もともと凛々しい顔立ちがどんどん引き締まっていく。
ダラと一緒に闘うことになる若者エランは、さすがの強さ、そしてイケメンである!!!

黄金杖を使った秘技はペアでなければ威力を発揮しない。
この二人が力を合わせて、あしたのジョー的な必殺技クロスカウンターを食らわす、
という王道の勧善懲悪ストーリー。
力を抜いて楽しめる作品になっているし、オープニングにはピッタリの映画。

インドネシア南部なのだろうか、
空の色、乾いた土地、みずみずしい森、すべての自然が美しいし、映像がキレイ。

そして実はマルコメ アンギン君が一番強かったんじゃないかと思っている午前2時。

アジアフォーカス・福岡国際映画祭2015

今年で25回を迎えるアジアフォーカス・福岡国際映画祭
今年も昨年と同じく、メイン会場は「ユナイテッド・シネマキャナルシティ13」。

会期は2015年9月18日(金)がオープニング、
9月25日(金)までの8日間の開催です。
今年はシルバーウィーク5連休と重なっているから、思う存分、映画三昧が出来そう!

公式招待作品は15作品。
その他にも、インドネシア特集上映台湾映画特集もあります。
詳細は公式サイトよりご確認を!

チケットは、前売り券がお得!

  前売券 当日券
1作品券 1,100円 1,300円
1作品学割券
(中高大生・留学生)
500円
5作品券 4,400円 5,500円
フリーパス 11,000円 13,000円

今年はフリーパスをゲットだぜ!
福岡国際映画祭の作品は、アジアの「今」を感じることが出来るし、
何より「市民で作る映画祭」というところがステキなんですよ。
5連休で全部制覇できますように~。

マッドマックス 怒りのデス・ロード/Mad Max: Fury Road

「マッドマックス 怒りのデス・ロード/Mad Max: Fury Road」

★★★★★

邦題 マッドマックス 怒りのデス・ロード
原題 Mad Max: Fury Road
製作国 オーストラリア
製作年 2015年
監督 ジョージ・ミラー
出演 トム・ハーディ/シャーリーズ・セロン/ニコラス・ホルト/ヒュー・キース=バーン
上映時間 120分
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/madmaxfuryroad/

<あらすじ>

本物のノンストップ・アクション映画!

資源が底を突き荒廃した世界、愛する者も生きる望みも失い荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を牛耳る敵であるイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の一団に捕らわれ、深い傷を負ってしまう。
そんな彼の前に、ジョーの配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、全身白塗りの謎の男、そしてジョーと敵対関係にあるグループが出現。
マックスは彼らと手を組み、強大なジョーの勢力に戦いを挑む。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード/Mad Max: Fury Road

主役のマックス役はメル・ギブソンからトム・ハーディへと交代して、監督は前3作に引き続きジョージ・ミラー、続編でもリブートでもない「マッド・マックス」!
「ハッピー・フィート」や「ベイブ」といった可愛らしい作品を撮った監督だよ、と言っても信じられないほどの狂気の地獄絵(笑)

「マッド・マックス」と言えば、マックスの相棒の犬と缶詰だが、残念ながら一切出ない。
続編じゃないしね…ただどうしても観たいって人はここから!

上映時間の98%がアクションという、今年一番ぶっ飛んでる映画なのではないだろうか!
2Dで観たにもかかわらず、とにかく息つく暇がないので観終わった後はぐったり。
3DIMAXで観たらどうなっていたことか。。。とは思ったが、映像はとにかく素晴らしいので3DIMAXで観るべきだった。

マックスがフュリオサと共に行って帰ってくるという内容(ざっくりしすぎ!)なんだけど、とにかくそういうことはどうでも良くて、とにかく観るべし。
上映日が8月21日まで延長されていたので、もう一度観たいなぁ~と思ってるくらいの面白さ!

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国際市場で逢いましょう/Ode to My Father

「国際市場で逢いましょう / 국제시장」

★★★★☆

邦題 国際市場で逢いましょう
原題 국제시장(国際市場)
英題 Ode to My Father
製作国 韓国
製作年 2014年
監督 ユン・ジェギュン
上映時間 127分
公式サイト http://kokusaiichiba.jp/

<あらすじ>

頑固ジジイの生涯はかくも壮絶だったのだ!

朝鮮戦争中、父親と末の妹と生き別れたドクス(ファン・ジョンミン)は、母親と2人のきょうだいと一緒に避難民として釜山で暮らすことに。
まだ幼いながらも家長として家族を守ることを心に誓った彼は、自分のことは後回しにしていつも必死に働いてきた。
その後、西ドイツの炭鉱で働き、ベトナム戦争に従軍するなど、ドクスは何度も命の危険にさらされる。

「国際市場で逢いましょう/Ode to My Father」

こんな家族が、こんなお父さんがいたんだろう。
私の両親世代より少し上の世代に。

ドクスの優先順位は常に「家族のため」。
家長としての重責を負いながら、家族のためだけに身を粉にして働き続けたドクス。

ドクスと親友との友情や、ドクスとヨンジャの恋はユーモアたっぷり。
愚直で不器用なアニキ、ドクスという、その辺に居そうな一人の男の人生を描いた作品で、全体的にコミカルに描かれていて、重い感じがしない。

まさに怒濤のドクスの人生と共に、韓国は徐々に豊かになり、現代グループの創始者・鄭周永とか、世界的デザイナーとなるアンドレ・キムとか、歌手のナム・ジンなど有名人がちょこちょこ顔を出す。
そして「国際市場」というタイトルの意味が明かされてからのエピソードは、涙なしには観られない。

自分ではどうすることもできない状況を受け入れ「こんな悲しみや困難を経験するのが子どもたちではなく、自分たちでよかった」と言い聞かせて生きてきたドクス。
最後の最後でようやく「つらかった」と告白し泣き崩れ、お父さんの唯一の形見を抱きしめるシーンは、自分の人生を抱きしめた瞬間だったのかもしれない。

人にはそれぞれの生き方があって、何が正しいのかは誰も決められない。
「自分らしく生きる」とは、どういうことなのか。
その問いかけすら出来なかった人生だった人もいたかもしれない。
ただ、ドクスの兄貴、あなたの生き方は素敵でした。

今の豊かな暮らしは、それほど遠い昔でない先人たちの困難や苦労があったからこそだと実感する。
だから、今の私たちは無邪気に「自分らしく」と語れるんだろう。

史実のスポットの当て方には意見があると思うけど、物語を貫いているのはあくまでも庶民目線で見た歴史のリアリティ。
韓国人の激情はこういう風に使うべき。

釜山が舞台なので、国際市場の風景は「あぁ、あそこだ!」と分かって楽しい。
東方神起ユノさんが、若い頃のナム・ジンを演じているということでも話題だった本作。
出演時間はほんの一瞬だ(と思えた)けど、ユノさんカッコよかったですよ。

オズの魔法使 ~The Wizard of Oz~

「オズの魔法使 / The Wizard of Oz」

★★★★★

邦題 オズの魔法使
英題 The Wizard of Oz
製作国 アメリカ合衆国
製作年 1939年
監督 ヴィクター・フレミング
上映時間 101分

<あらすじ>

カンザスの農場に住む少女ドロシーは「虹の彼方のどこかに」よりよい場所があると夢見ている。
竜巻に家ごとオズの国に飛ばされたドロシー。
そこで出会った北の良い魔女グリンダは「黄色のレンガ道をたどってエメラルド・シティに行き、オズの魔法使いに会えば、カンザスへ戻してくれるだろう」とドロシーに助言してくれた。
ドロシーは、知恵(脳みそ)がない案山子、心を持たないブリキ男、臆病なライオンと出会い、共に旅をし、たどりついたオズの国から家に帰ろうとする。

「オズの魔法使 / The Wizard of Oz」

言わずと知れたファンタジーの名作。
有名な作品なのに、今まで観なかった自分、反省。
1939年製作というのにも驚き。

「脳みそがないカカシ」は「頭脳」を、
「鍛治屋が心を入れ忘れたブリキの木こり」は「心」を、
「臆病なライオン」は「勇気」を求めて、
オズの魔法使いに会いに行く旅に出る。

ドロシーと旅の仲間は、道中、色々な試練を乗り越えて、オズの大王に会う。
そして自分が欲しいと思っていたもの(「頭脳」「心」「勇気」)を要求するのだが、
「足りないと思っていたものは、すでにある」と指摘され、気付く。
「最初からすでに持っている」と。

事実、冒険中に一番頭を使っているのはカカシで、
一番感情をあらわにしているのは木こりで、
一番勇敢に戦っているのはライオンなのだ。

自分の魅力や個性は、自分ではなかなか気付きにくいのかもしれないし、
自分の能力に自信を持つきっかけは、誰か後押しであるのかもしれない。

最初はモノクロなんですが、オズの国に飛ばされた瞬間からカラーに。
その演出は「おぉー!」と感嘆してしまうくらい。

その後のオズの国のカラフルな世界は観ていてとても楽しいし、
個性的なマンチキンの人たちや旅の仲間たちとの冒険はワクワクする。

ドロシー役のジュディ・ガーランドは愛らしいし、
カカシの足がヨロヨロしてる感じとか、ライオンの尻尾もさりげなく動いていたり、
メーキャップや特撮はずいぶん頑張っていて、今観ても違和感ナシ。

終盤の西の悪い魔女の館に潜入する場面は
「ロード・オブ・ザ・リング!?」みたいな予想外の緊張感!
(こっちが先なんですけどねー・・・w)

ジュディ・ガーランドが歌う「虹の彼方に」は名曲だし、
ブリキの木こりがラッパを鳴らすいきなりの一発芸?「ププッー」には大爆笑、
特典映像も見どころ満点の「オズの魔法使」。
自分探しをしてる人、人生に疲れた人は是非。

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ひとり(カザフスタン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ひとり / Little Brother」

★★★★★

邦題 ひとり
英題 Little Brother
製作国 カザフスタン
製作年 2013年
監督 セリック・アプリモフ
上映時間 94分

<あらすじ>

ひとり佇む少年の孤独と愁いが胸に迫る

母親に死なれて以来、イエルケンは小さな村でひとりでたくましく暮らしている。子供だと思ってナメてかかる大人たちと闘いながら。そんなある日、実の兄が突然帰ってきた。喜びと幸せ。これで、ナメられないですむ。イエルケンはその兄を頼りにしようとするが…。必死に生きようとする少年の心根をわかってくれる大人はいない。ひとりぼっちの彼の矜持と孤立が切なく、健気だ。

「ひとり / Little Brother」

小学生のイエルケンは、なんと山の村で一人暮らしをしている小学生。
母親が亡くなったあと、父親は再婚し家を出て行ってしまった。
その父親は、1カ月に1回、食料などを持ってくる。
ご飯はその材料で隣の人が作ってくれる。

イエルケンはいつも一人で生活していて、日干し煉瓦を作ったりしている。
そんな彼に、周りの大人や学校の先生でさえも親切にはしてくれない。

健気に泣かずに頑張っているイエルケン。
そんなある日、都会の学校に行っているお兄ちゃんが里帰りすることに。
「これで皆を見返すことができる!」と嬉しくてたまらない。
お兄ちゃんに、相手を負かす寝技なんかを教えてもらったりする。

イエルケンはお兄ちゃんが喜んでくれるようなことを次から次にする。
お母さんの墓参りに行ったり、映画を観に行ったりもする。
映画は6人以上じゃないと上映しないと言われて、6人分の入場料を払ったり。

ところがこの兄ちゃん、里帰りの目的は「恋人」と「金」だった。
イエルケンに知り合いを回らせてお金を借りて来させる兄。
だけど、イエルケンは嫌な顔をしない。

山羊を盗まれたり、作った煉瓦のお金を払ってくれなかったり、金貸しの借金を背負わされたり、子供だからと言ってイエルケンを利用して騙したりするのだから、ホントとんでもない境遇だ。
兄でさえもイエルケンを利用して・・・。

結局、兄は弟から巻き上げた金を使い果たし、街へ戻って行ってしまう。
「バスの見送りがないと親戚がいない人のように思われる」と言うイエルケンは、兄の見送りに行く。

帰り道、お祭り帰りのピエロと出会うシーン。
馬鹿にされながら観客を笑わせているピエロ。
ピエロの顔を見損なったのだけど、悲しみを持つという意味を表現した「涙のマーク」があったのだとしたら、それはイエルケン自身だったのかもしれない。

ピエロにもらったハーモニカを少し吹いて佇むイエルケン。
最後には、イエルケンはまた「ひとり」になる。

初めて観たカザフスタン映画。
なんとエンドロールで「弟に捧げる」と書いてあった。
兄は監督だったのか!!!

イエルケンの暮らしが特に貧しいような描き方はされていないので、すごく悲しい気分になったりはしなかった。
とても健気でたくましいイエルケンが成長して、兄と一緒にお酒を飲み交わしていたらいいなぁと思った。
監督が来福していたら、質問攻めにあっただろうなぁ・・・。

——————————-
アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014、これで観た映画のレビュー全て書き終わりました。
(「sala(禁忌)」は日本公開になったらレビューする予定)
今年の鑑賞本数は15本。「予兆の森で」は二回観たから16本。

5点満点
予兆の森で」「シッダルタ」「ひとり」「絵の中の池

4点
ジャングル・スクール」「慶州」「タイムライン」「山猪温泉
ロマンス狂想曲」「私は彼ではない」「ブラインド・マッサージ

3点
神の眼の下に」「兄弟」「サピ」「sala(禁忌)」。

今年の作品は全体的に、自分のアイデンティティーとか、存在する意味を問うような内容が多かったという印象です。そして、ループするような感じ。
そしてやっぱりゲスト登壇があると、より映画の内容が分かって面白いです。

さて、アジアフォーカス・福岡国際映画祭。
来年は25周年ということで、さらに期待大です!

サピ(フィリピン) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「サピ / Possession」

★★★☆☆

邦題 サピ
英題 Possession
製作国 フィリピン
製作年 2013年
監督 ブリヤンテ・メンドーサ
上映時間 102分

<あらすじ>

これは現実か?スーパーリアルな社会派ホラー登場!

冒頭から、ぐいぐい惹きつける。緊迫感あふれるドキュメンタリータッチの映像が、一気にリアル感を高める。陳腐になりかねない悪魔祓いという超常現象を、ニュース報道の世界を通じて描き出す。日常の中に侵入する恐怖が、悪夢のように観客を襲う。返す刀で、メディアの現実もえぐりだす。単なるホラーで終わらせないのがメンドーサ監督の凄さ。
※R18

「サピ / Possession」

テレビ局が舞台。
「悪魔憑きの取材」というストーリーの中、突然不可解で恐ろしい出来事が登場人物のみに次々と起こる。
ホラー要素は詰まってて、あ~!何か来る!と思った瞬間、次の場面では何事もなかったかのようにしていて・・・。
やらせや裏取引、醜悪なマスコミの裏面を描いて、権力という名の悪魔に取り付かれたのは自分たちではないのか、心の内で起きた何かをうまく表現しているなぁと思った。

テレビ局のプロデューサー役のメリル・ソリアーノさん。
劇中も「メリル」という名前で、すごくリアリティがあった。
本当にこんなプロデューサーいそう!っていう感じ。

個人的にはちょっと不完全燃焼の3点(エクソシストみたいな感じだと思って観たからなんだけど・・・)だけど、友人はもう一度観たいと言っていた。
フィリピンの街並みとか、心霊現象を信じる人たちとか、ひとつひとつを観れば興味深い映画だったのかも。
もう一度観る機会は来るのだろうか~。

Q&A記事

兄弟(フランス/グルジア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「兄弟 / Brother」

★★★☆☆

邦題 兄弟
英題 Brother
製作国 フランス/グルジア
製作年 2014年
監督 テオナ・ムグヴデラゼ
上映時間 98分

<あらすじ>

グルジア内戦を少年の視点から鮮明に描く

1990年代初頭、内戦の影が忍び寄る都市トビリシ。銃声が響き、街を逃れる人々も多い中、マイアは二人の息子を育てている。兄ギオルギは休校が続く中で、次第に悪の道に進む。弟ダトゥナは才能豊かなピアニストで、母と兄の誇りである。重苦しい時代、明るいダトゥナの存在はかすかな希望の光だった。ソ連からの独立を模索する小国グルジアの未来であるかのように。

「兄弟 / Brother」

映画は、グレン・グールドに憧れて
ピアニストを夢見る少年ダトゥナの弾くシューベルトの即興曲から始まる。
美しいシーンの中に、時おり銃声がひびく。

内戦の混乱と暴力に巻き込まれる兄弟。
いつ終わるか知れない混乱の中で、
ダトゥナも次第に笑顔を失い、ついには声も出なくなってしまう。

一方、ギオルギは弟思いの優しい兄だが、
祖国が変わっていくと同時に、兄も変わっていってしまう。

ダトゥナ(弟)が登場するシーン(ピアノを弾くシーン)は、安堵と静寂。
ギオルギ(兄)が登場するシーンは、都会の喧騒や革命の動乱。
といった感じで、この映画のコントラストになっている。

テオナ監督は、内戦時14歳だったのだそう。
国家によって、子どもたちが巻き込まれていく理不尽さ。
90年代グルジアの失われた世代を知るドキュメンタリー的な映画だった。

ダトゥナが声と笑顔を取り戻す時、兄も暖かい光に包まれる最後のシーン。
グルジアの子どもたちが明るい未来を取り戻せる日が来ると信じて。

弟役のダトゥナを演じるのは、本当にピアニストを目指す少年だそうで、
彼の綺麗で長い指に終始目が釘付けになった。

兄。公式パンフレットを確認したら、17歳とのこと。
あまりに恰幅がよかったので、17歳に見えなかったのは私だけかな・・・。
福岡市図書館のフィルムアーカイブに収蔵されるそうなので、また機会があればじっくり観たいと思う。

ディレクター懇談
QAもあったはずなんだけど、まだ記事になっていないよう。

ブラインド・マッサージ(中国/フランス) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ブラインド・マッサージ / Blind Massage」

★★★★☆

邦題 ブラインド・マッサージ
英題 Blind Massage
製作国 中国/フランス
製作年 2014年
監督 ロウ・イエ
上映時間 114分

<あらすじ>

中国第6世代の旗手ロウ・イエの最新作。

南京のマッサージ院を舞台に、そこで働く男女の愛と憎しみ、欲望と痛みなど、人間模様を苛烈に描く。見えない人間だからこそ、繊細な指の感覚が身体の痛みをとらえ、癒すことができる。1組のカップルが新入りとして働きだし、それまでの平穏な日常が一転、マッサージ院に緊張が走る。人間の希望と幻滅を凝視する、圧倒的な演出力。
※R15

「ブラインド・マッサージ / Blind Massage」

マッサージ治療院にく視覚障害者の物語。
障害者と健常者を混ぜて配役していて、とても生々しい。

盲人男女10人による、もつれ合い絡み合う人間関係。
見えないがために感じる不信感で、激しく争ったりする。
人間社会の普遍的な出来事を、視覚障害者を通して描くことで、感覚を研ぎ澄まして感じることが出来るような作品だった。

思いは一人一人違うけど、最後のシャオマーの笑顔とマンの佇まいは、
幸せは案外普通のことを寄せ集めたものなんだと気付かされる素敵なシーンだった。

マン役のホアン・ルーは「ロマンス狂想曲」のチン・ランもやっていた。
対照的な役なんだけど、個人的には「ブラインド・マッサージ」のホアン・ルーの方が好き。

山猪(いのしし)温泉(台湾) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「山猪(いのしし)温泉 / The Boar King」

★★★★☆

邦題 山猪(いのしし)温泉
英題 The Boar King
製作国 台湾
製作年 2014年
監督 クオ・チェンティ
上映時間 102分

<あらすじ>

山奥の温泉で繰り広げられる優しき人間ドラマ

奥深い山間の山猪(いのしし)温泉。ここで小さなホテルを営む夫婦がいた。強力な台風が襲い、一帯は壊滅状態となった。夫は台風の日に出かけて以来、行方知れず。ホテルも甚大な被害を受け、残された妻は途方に暮れる。そんな時、夫が知人宛に送ったパーティの招待状が届いた…その真意は?絶望的な環境の中、未来へと期待をつなぐ人々を温かいまなざしで描く。

「山猪(いのしし)温泉 / The Boar King」

この映画も実話に基づいたフィクションだ。
台風によって一夜にして破壊された故郷を離れるか、残って再建をするか。
この物語の主人公たちは「残る」ことを選んだ人たちの物語。

ビデオ撮影が趣味のロンは、台風の日のもビデオをまわし、その日以来行方不明になってしまう。
台風後の山猪温泉には、宅地開発をする業者が来て、残っている土地を買収している。
メイチュエは途方に暮れるが、ロンが生前に発送した知人宛てのパーティーの招待状と引き出物が届いたことが分かり、ロンが残したビデオを見ながら、夫がなぜそんなことをしたのかを考える。

「山猪温泉」は夫の夢だった。
それは、メイチュエの夢にもなるのだろうか。
残された人たちの選択は・・・。

多くを語らないメイチュエだが、夫に対する気持ち、山猪温泉への愛着、その芯の強さが伝わってくる。
義理の娘フェンにとっても、家族の絆を思い出させる父親のビデオ。
家族の幸せな時間を映したビデオはカラー、台風後の現在はモノクロで表現されている。
メイチュエとフェンの思いがひとつになったとき、希望の光が全てをカラーにするのだ。

最初の梅の花のシーン。
力強く咲く梅が、再建に向けて頑張っていこうという思いと繋がっていて、ロンからのメッセージのようにも受け取れた。

主演のルー・イーチンさんは「ピノイ・サンデー」にも出ていた女優さん。
ひょうひょうとしていて、芯が強い雰囲気の女優さんだと記憶している。
娘役のウー・イーティンさんは、小さくて可憐ですごく可愛らしい女性だった。

今回、二人とも福岡に来られていたのだけど、残念ながらQAには参加できず。
最終日の上映にて鑑賞。
福岡市図書館のフィルムアーカイブに収蔵されるそうなので、また観る機会がありそう。
もう一度観たくなる映画だった。

Q&A記事

ジャングル・スクール(インドネシア) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「ジャングル・スクール / The Jungle School」

★★★★☆

邦題 ジャングル・スクール
英題 The Jungle School
製作国 インドネシア
製作年 2013年
監督 リリ・リザ
上映時間 90分

<あらすじ>

学ぶことの素晴らしさを教えてくれたのは…

NGOで働くブテットはスマトラ島の森で暮らす子どもたちに読み書きを教えていた。ある日、森の中で倒れ、別の集落の少年ブゴに助けられる。彼の集落には読み書きできる大人がいない。そのせいで森の外の人間から不当な扱いを受けていると知ったブテットは……。実在の人物を主人公に、気鋭リリ・リザ監督が、自然、文明、教育、そして次世代に向け未来を穏やかな視線で問う。

「ジャングル・スクール / The Jungle School」

スマトラの熱帯林を舞台に「森の人」に読み書き計算を教えた女性教師ブテット。
その実話を元にしたリリ・リザ監督の「ジャングル・スクール」。

伝統と文明、そして教育とは何か。
なぜ知識(勉強)が必要なのか。
本当に住民たちのためになる支援がどういうものか。

学問が災いをもたらすという原住民の価値観も尊重し、
心から教育を望む子供の気持ちにも寄り添うブテット。
ジャングルで自然と共に生きる人々が、自分たちと森を守るための教育。
森の外と森の中をつなぐコミュニケーションとしての教育。
純粋で素直な子供たちに未来を託して。

最後は彼女の想いが実を結ぶ。
そして私たちも映画を通して「なぜ勉強するのか」「本当の支援とは何か」を考えるのだ。

とにかく、カメラワークが素晴らしい。
アニメーションも使っていて、子供が見ても分かりやすい内容。
そしてブテットにくっついて離れない二人の子供がとっても可愛い!

「ジャングル・スクール」主人公を演じたのはプリシア・ナスティオンさん。
2013年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された「聖なる踊子」の主演女優。

プリシア・ナスティオンさんとリリ・リザ監督、お二人とも去年は福岡に来ていたので、実は福岡で出会ってこの映画を一緒に作ったのかな!?
なんて思いながら鑑賞した。
素直に感動する、納得の観客賞受賞作品だった。

ディレクター懇談
福岡観客賞受賞おめでとう!

シッダルタ(インド/カナダ) – アジアフォーカス福岡国際映画祭2014 –

「シッダルタ / SIDDHARTH」

★★★★★

邦題 シッダルタ
英題 siddharth
製作国 インド/カナダ
製作年 2013年
監督 リチー・メーヘター
上映時間 96分

<あらすじ>

これは今日のデリーで起きている事である

デリーでジッパー修理をして細々と収入を得ているマヘンダル。そこで、苦しい家計をなんとかしようと、12歳の息子シッダルタを遠方の工場で働きに出す。しかし数週間たっても息子は家に帰ってこない。お金もない、財産もない、頼れるひともいない。父親は自ら息子捜しの旅に出る。父親のその愚直なまでの姿に、わたしたちは祈るような気持ちでスクリーンを見つめてしまう。

「シッダルタ / SIDDHARTH」

これは「実話」である。
リチー監督がデリーに里帰りした際に、タクシーに乗ったリチー監督は運転手に「ドングリ」という場所を知っているかと聞かれた。タクシー運転手である彼は、自分の息子の身に起こったことを話し始めた。
1年間ずっと息子を探していた運転手。息子は「ドングリ」という場所にいるという噂がある。そこを知っているかと。リチー監督は、持っていたiPhoneで「ドングリ」を検索、「ドングリ」はムンバイにあるとすぐに分かった。運転手は他にも何か分かったら教えてくれと、電話番号をリチー監督に渡す。
後日リチー監督が電話すると、その電話番号はまったく別の人のものであった・・・。

お金もない、財産もない、頼れる人もいない。
警察への届け出も「行方不明者を探すには時間が経ちすぎている」と言われ、父親は自ら息子捜しの旅に出ようとするが、ムンバイまで行くのに45日働いてお金を貯めなければいけない。
父親が息子の行方を尋ね歩くその姿には、涙せずにはいられなかった。

探し疲れ、最後には「俺は息子の顔も思い出せない・・・」とつぶやくマヘンダル。
自分の父親に電話するマヘンダル「俺は出来ることは全てやったんだ・・・」と。
父親に「これも神のご意志だ。お前は帰って嫁と娘の世話をしっかりするんだ」と言われ家に戻るマヘンダル。次の日、マヘンダルは家族を守るために、力を振り絞って働きに出かけるのだ。

インドで頻繁に起こっている子供の人身売買。
現在はパキスタンルートなどもあるそう。

インドの貧困層の人たちの現実を丁寧に描いたリチー監督。
政治的、宗教的問題は抜きに、人が尊厳をもって生きていくとはどういうことか、心に訴える作品だった。
家族もいる、落ち込んで鬱になるという選択肢はなく、働かざるをえない状況で生きている。
どんなに劣悪な状況だろうと前向きに生きる人たち。

今までずっと一緒に居た人が突然居なくなる悲しみ、何が「救い」になるかは分からないけど、それでも生きている私たちは、生きていかなければいけない。前を向いて。


Q&A時のリチー監督。
小さなことを発見する天才、どんなことにでも興味を持つって素晴らしい。
真面目だけどお茶目な一面もあってファンになっちゃった!

Q&A記事